DMZを越えて
(第七章)



金剛山観光客でごった返す丹楓館


(2003・12・30 完成)


 午後1時40分頃、私たちは九竜淵コースの駐車場に駐車していたバスに乗り込みます。バスに乗る際、運転手さんも他の乗客ものりまき・ふとまきに対して何かするように言います。最初は何をするように言っているのかよくわからなかったのですが、運転手さんが私たちの首にかけられている観光証などが入ったビニールケースを手にとって、バスの運転手席の脇にある機械にぺたりとつけます。すると機械がビニールケース内の金剛山観光カードの情報を読み取ったようで、『ピーッ』という音が鳴ります。
 どうもシャトルバス運行の場合、バスに乗車したら金剛山観光カードの情報を機械に読み取ってもらう必要があるようです。カード情報を機械が読み取ることによって、シャトルバスに自由に乗り込む金剛山観光客の動向を把握するようにしているのでしょう。


左の写真は、シャトルバス利用時に金剛山観光カードの情報を読み取ってもらうバス運転席隣にある機械。
右の写真は金剛山観光カード。シャトルバス運行時は金剛山観光客の所在確認に用いられる他、
金剛山コンドミニアムの窓口でウォン現金を支払い、このカードに入力してもらえば、キャッシュカードとしても使うことができる。

 私たちは機械に金剛山観光カードの情報を読み取ってもらった後、九竜淵コースから最後に戻る1時50分発のシャトルバスに乗り込みました。バスはまもなく出発し、温井閣へと戻ります。周囲の景色は行きと特に変わりありません。ただ、行きも見えた北朝鮮側の作業現場では昼食を作っていると思われる煙が立ち昇っていました。
 温井閣に戻るとガイドの康さんがいました。康さんは私たちに「金剛苑へ行くバスは6時30分、金剛山温泉から出発します」。というようなことを説明しながら私たちの差し出したノートに6:30と書きます。どうも三日浦から戻ると温井閣には寄らずに直接温泉へ行き、温泉から金剛苑へ向かうようです。そうすると今を逃すとお土産物を買う時間が明日しかなくなります……そこでのりまき・ふとまきは温井閣から三日浦へ出発するまでの時間を使って、金剛山のお土産を買うことにしました。
 お土産は最初からお菓子、タバコ、本などの資料そしてお酒を買う予定でした。お酒は重くてかさばるので明日の最終日にまわすこととして、お菓子、タバコ、本を買うことにします。お菓子はこれまで二回の金剛山旅行では見たことがないものもあったので、初めてお目にかかる北朝鮮製のお菓子を中心に購入しました。ところで私たちの目の前で、朝鮮人参入りのゼリーと思われるお菓子を20箱近く買っていった人がいました。正直びっくりです。
 タバコはお買い得であった北朝鮮タバコ10種類詰め合わせがなくなってしまったので、北朝鮮らしい感じがする『楽園』と『栄光』を1カートンづつ購入しました。それから金剛山関連の韓国の本二冊と、英語で書かれた北朝鮮発行の金剛山の伝説の本を購入しました。
 買い物が終わって一段落です。ふとまきは小腹がすいたということで、ソフトクリームを購入してぱくつきます。この頃になって、のりまき・ふとまきの体調はようやく回復傾向であることがはっきりとしてきました。


お土産物を買うお客さんで賑わう温井閣内


温井閣内の免税店。プラダやシャネルの看板が見えます


温井閣敷地内にある北朝鮮初のコンビニ。
コンビ二は金剛ビレッジ敷地内にもある。


 2時過ぎに温井閣に戻ってきた私たちにとって、三日浦への出発時間の2時半は本当にすぐでした。みんながバスに乗り込みだすと、私たちも急いでマー2のバスに戻ります。バスは午後2時半、順調に出発して三日浦を目指します。
 のりまきは三日浦への行き帰りで、建設中の東海北部線の様子がかなり詳しく確認できるものと期待していました。前回、前々回の金剛山観光の際は、三日浦までの途上は日本植民地時代の旧東海北部線の路盤の比較的近くを通ったので、今回は工事の状況がよく見ることができるに違いないと思っていたのです。
 ところがです……バスは温井川を渡らず、昨日、陸路で金剛山へ向かった道路と同じ道を走り出します!今回は、これまでの三日浦・海金剛観光で利用されていた道路と川を挟んで反対側の道を行くのです!これでは建設中の鉄道は川の反対側になってしまいます……正直少々がっかりしました(-_-メ)

 がっかりしてばかりいても面白くありません……バスの車窓からの景色を楽しむことにします。まず、相変わらず川では洗濯をしている人たちの姿が見えます。それから前回と前々回、丘の中腹にあったトラックに載せられた連射砲のようなものが、場所を移転していることが確認できました。トラックに載せられた連射砲のようなものは全部で3つ確認できました。
 きのうの夕方、子どもを背負った母親が川を徒歩で渡っていた神渓川と温井川の合流地点では、徒歩で川を渡っている人のほかに、今日は自転車をかついで川を渡っている人がいました。みんな川を渡る前に履物を脱ぎ、ズボンやスカートをたくしあげてから荷物や履物を持って川に入っていきます。この先の集落付近でも、昨日と同じくやはり川を徒歩で渡っていました。どうも北朝鮮の皆さんは、あくまで川は歩いて渡らねばならないようです(-_-メ)
 このあたりからは、川向こうに鉄道工事らしく土砂が盛られた場所が確認できました。どうも工事は行なわれているようです。やがて向こうの川岸に山が迫っているあたりでは、現代建設の重機と数十〜100人くらいの北朝鮮の作業員たちが作業を行なっていました。この作業はどうやら鉄道の建設工事であるようでした。遠くから見ての印象なので断言できませんが、北朝鮮の作業員たちの中にはただ立っているだけで作業をしていなさそうに見える人もいて、あまり作業効率は高くなさそうでした。
 それにしてもきのうの夕方は道路脇で多くの人が作業をしていましたが、今日は作業をあまりしていません。どういうことでしょうか??
 また三日浦へ向かうバス内で気づいたのですが、今回のマー2のバスに乗っている旅行者の中に、何人かメモをとっている人がいました。のりまきを含めて3〜4人がメモをとっていました。これまでの金剛山旅行ではメモをとっていた人をほとんど見かけなかったで、少しびっくりしました。そして今回の三日浦行きのバスにはガイドの康さんの先輩と思われる現代の男性職員が乗り込んでいました。三日浦に到着した後、その男性職員は康さんになにやらアドバイスをしていました。

 私たちの進む道は、かつての三日浦・海金剛に向かった金剛山観光専用道路と同じく、北朝鮮の人たちは利用ができないようで、みんな川向こうに見える道を利用しているようでした。川向こうの道はかつての金剛山観光専用道路だと思われます。みんな歩いたり自転車に乗っているようでしたが、古いサイドカーが走っていくの姿も目撃しました。
 やがて道は神渓川に架けられた仮橋のような橋を渡ります。この仮橋はバス1台がようやく通れる幅しかなく、バスはみなスピードを極度に落として慎重に渡っていきます。橋を渡ると故金日成主席が子どもと談笑している姿を描いた宣伝画のある場所に出ました。ここからは以前の三日浦・海金剛へ行く金剛山観光道路と同じ道路です。
 まもなく道の脇に学校と集落が現れます。学校の校庭は恐ろしく水はけが悪いようで、池のような巨大な水たまりが出来ていました。また、学校の校庭には鉄棒があるのが見えました。集落を過ぎると三日浦はまもなくです。このあたりの鉄道の路盤はかなり完成している感じでした。また、三日浦前の広場のような場所には、束草港でトラックに積まれていて、検問場所と金剛山青年駅周辺で確認したコンクリート製の白い枕木と、木製の黒い枕木が置かれていました。
 そして目の前に、前回と前々回確認した旧東海北部線の落ちた橋が見えてきます。ところが今回は様相が違っていました!橋脚が作り直されてみごとに新しくなっているではありませんか!いずれ橋脚の上には鉄道が敷設されることになるのでしょう。

 私たちを乗せた金剛山観光バスは、三日浦の蓮花台近くに停まります。また今回も前回同様、蓮花台には行かないようです。金剛山観光客の皆さんは、みんなぞろぞろと丹楓館への下り坂を降りていきます。
 丹楓館への下り坂の途中で、さきほど木蘭館で隣になった日本語が話せる女の子と出会いました。女の子はのりまきも買った金剛山の本を読んでいました。
「こんにちは」。またまた挨拶です。女の子は同じバスに乗ってきた小学生高学年くらいの男の子が一緒でした。男の子はまったく日本語がわからないのですが、三日浦湖畔までなんやかんやとみんな一緒に降りていきます。湖畔に到着すると皆で記念撮影です。そしてのりまき・ふとまき二人の記念撮影の番になると、女の子は「ハイ、チーズ!」と声をかけます。う〜ん……
 三日浦湖畔に着いて湖面を眺めていると、さっき木蘭館入り口で見かけたのと同じような、妙なセンスの動物オブジェが湖の中の岩に据え付けられていました。いったい誰が何の目的でこんな妙なオブジェを作ったのでしょう??謎であります。



三日浦にもあった謎のオブジェ。このセンス、実に不思議です。

 三日浦湖畔の丹楓館も、木蘭館と同じくきれいに改装されていました。また丹楓館も各部屋ともテーブルやテーブルクロスが新調されたようで、いつでも利用可能なようになっていました。金剛山観光の日程次第では、丹楓館も昼食場所として利用できそうです。
 丹楓館で一番大きい、湖を望む円形の部屋の中ではなにかやっているらしく、みんな争うように部屋の中へと入っていきます。もちろんのりまき・ふとまきも金剛山観光客でごった返す丹楓館の湖を望む円形の部屋に入ってみます。
 部屋の中では、木蘭館と同じ赤いツーピースのスーツを着た北朝鮮の女性店員さんたちが忙しく働いています。中では金剛山の土産物の他に、おつまみ系の軽食とマッコルリも販売していました。さっそく呑ん兵衛オヤジたちがつまみとマッコルリを買って一杯ひっかけています。つまみは野菜とお肉の串焼きのようなものと、ジャガイモかなにかで作られたと思われるチジミと蒸したジャガイモでした。皆それぞれ値段は1ドルでした。串焼きは美味しそうだったのですが、チジミは調理段階で明らかに油多すぎで、表面に油が浮いてしまっていましたし、ジャガイモはちょっと大きすぎました。ところでここの北朝鮮の店員さんは結構商売っ気があって、大きな声で「白頭山のジャガイモはいかがですか〜」と、しきりに薦めていました。
 のりまきはおつまみ系の軽食を食べてみようかどうか迷っていたところ、奧の方からふとまきの声がします。ふとまきがいる場所まで行ってみると、これまで見たことのないパッケージのタバコ『金剛山』と、これも見たことがないクッキー詰め合わせと飴の詰め合わせが売っているではありませんか!私たちはついついタバコ『金剛山』と、クッキー詰め合わせと飴の詰め合わせを買ってしまいました(笑)。
 そんなこんなのうちに美味しそうだった串焼きは売り切れてしまい、回復途上の体調も考えて、丹楓館での試食はあきらめることにしました。次回の楽しみとして取っておくことにしたいと思います(^o^)。


三日浦湖畔にある丹楓閣。木蘭館同様、改装されてきれいになっていた。


後ろ姿ですが……赤いスーツを着て金剛山観光客相手に奮闘する、丹楓館の北朝鮮女性店員

 丹楓館を後にして、のりまき・ふとまきはのんびりと三日浦湖畔を散策します。三日浦では前回・前々回とかなりたくさんの写真を撮ったので、今回はあまり撮らなければならない写真はありません。散策路に人も多いですし、あわてずのんびり夕方近くの三日浦を堪能しました。
 途中、蓬莱台ではコダックの社員さんに記念写真の撮影をお願いしました。コダックの社員さんはきれいに記念撮影してくれるので、金剛山観光の記念にもってこいです(^o^)。また前回『定員5人』と注意書きがされていたつり橋は、今回はきちんと架け替えられていました。さすがに定員5人のつり橋を10〜20人もの人に渡られるのはまずいと思ったのでしょう。
 三日浦観光の最後は将軍台です。ここからはもうすっかり西に傾いた日を浴びた三日浦の光景を堪能しました。夕方の三日浦もまた良し……


夕方の三日浦もまた良し……

 今回は海金剛には行かず、三日浦の観光だけだったのでなんとなく駆け足のようになってしまいましたが、次なる目的地、金剛山温泉に向かうために私たちはバスに乗り込みます。三日浦から金剛山温泉へのバスはやはりシャトルバスで、金剛山観光カードの情報を機械に読み取ってもらえばどのバスに乗り込んでも良いようになっていました。
 ところで、三日浦から帰りのリムジンバスは今回の陸路観光客が全員で移動する形のリムジンバスだったので、バスに乗る時間が遅かった人たちの中で三世代家族などの大家族では、同じ家族で別のバスに乗らなければならない事態が起きました。私たちが乗ったバスに乗り込んだ乗客たちの中にもそのような目にあった人がいて、苦笑いをしながら、「ああ、俺たち離散家族になっちゃったよ〜〜」。と言いました。バスの他の乗客たちは大笑いです。
 午後4時をまわった頃、バスは三日浦から金剛山温泉へ向かって出発しました。バスは夕暮れが近づく中、金剛山温泉へ向かいました。




DMZを越えて(序章)に戻る

DMZを越えて(第6章)へ戻る

蓬莱の巻に戻る

金剛一万二千峰へ戻る

のりまき・ふとまきホームへ戻る



DMZを越えて(第8章)へ進む