対北朝鮮ヤミ支援問題について
(2003・4・6 最終加筆)

 金剛山観光の暗部といえば、やはりこの『対北朝鮮ヤミ支援問題』でしょう。2003年1月末に、金剛山観光を始めとする韓国の対北朝鮮事業の遂行の裏に多くの“ヤミ支援”が北朝鮮側に流れていたという事実が明らかになりました。それによって、韓国から北朝鮮に直接観光に行くことが出来る金剛山観光の開始によって、『朝鮮半島の南北関係が厳しい敵対関係から協調へと進みつつある』とは単純には括りきれない、南北の微妙な関係性や、表には出ないいわゆる“闇の関係”も深めていったことも明らかとなったのです。
 この問題はいまだ全貌が明らかとなっていません。そしてどこまで真相が解明されるのかもわかりません。わかっているのは2000年6月に、現代グループから北朝鮮側に5億ドル(約600億円)ものお金が北朝鮮にひそかに渡されたという事実のみです。
 そこで、このコーナーではヤミ支援“疑惑”が持ち上がった経緯と、ヤミ支援事件の焦点となっている“問題点”を中心に触れていきたいと思います。今後『特別検事』がこの事件の真相解明に取り掛かることになっていますので、捜査経緯を見ながら、随時情報を追加していきたいと思います。


1・ヤミ支援問題の経緯

《登場人物》
金大中・韓国大統領
言わずとしれた韓国前大統領にして韓国初のノーベル賞(平和賞)受賞者。弾圧に耐えて韓国大統領に昇りつめた。金剛山観光を始めとして南北関係の改善に精力を注ぎ、その対北朝鮮政策はイソップ童話に題を取って『太陽政策』と言われた。しかし太陽政策の陰で北朝鮮への巨額ヤミ支援が行なわれたことが発覚、2003年2月14日、任期切れを前に国民に対して謝罪。

鄭夢憲・現代峨山会長(現代グループ総帥・現代商船オーナー)
鄭周永現代グループ初代総帥の九男。2000年3月の現代グループの後継者をめぐる兄弟間の争い(王子の乱)を経て、現代グループの後継者となる。父の在世中より対北朝鮮ビジネスを中心事業としており、現在も北朝鮮ビジネス中心の活動をしている。対北朝鮮ヤミ支援問題ではかなり中核的な役割を担っていたと思われる。ヤミ支援問題が韓国で騒がれ始めた2002年9月末から2003年1月までの3ヶ月あまり、アメリカに“出張”をしていた。2003年2月16日、氏は、『秘密支援は5億ドルで、現代グループが北朝鮮でのビジネス拡大のために払ったお金で、具体的には金剛山観光・開城工業団地など対北7大事業の契約費である。そして金剛山観光に日本やドイツの企業が食指を動かしており、その動きを食い止める意味もあった』と、対北朝鮮ヤミ支援の説明をした。
事件の捜査進展の中で心労を深め、2003年8月4日、投身自殺を遂げる。


厳虎声・ハンナラ党国会議員
2002年9月25日にヤミ支援問題を韓国国会の金融監督委員会で追及、この問題の発火点を作った。その後も終始問題追及の先頭に立つ。

厳洛鎔・元産業銀行総裁
2002年9月25日に韓国国会の金融監督委員会で、現代商船への産業銀行の異常な融資のあり方について証言。その後も10月4日に国会・財政委員会の産業銀行への国政監査の席で、更に詳細な証言を行い、対北朝鮮ヤミ支援問題解明に関して大きな貢献をした。

金忠植・元現代商船社長
現代グループの中にあって不正常な資金の借り受けに抵抗した。そして厳洛鎔氏と較べてかなり及び腰であるが、関係者の中では真相告白に積極的であった。

李瑾栄・元産業銀行総裁、金融監督委員長
2002年6月の対北朝鮮ヤミ支援時の産業銀行総裁。その後金融の不正を取り締まる『金融監督委員長』に就任し、結局自らも関与したヤミ支援問題追の追及を行なわねばならない立場に陥るが、当然、追及には全く熱意を見せないばかりか“妨害”を行なった疑惑も指摘されている。



〜第一部〜
疑惑発覚から対北朝鮮ヤミ支援が事実であることが判明するまで
(2002年2月〜2003年1月30日)


 この問題が最初に話題となったのは2002年2月のことでした。話の出どころは韓国国内ではなく、アメリカでした。
 CIAと駐韓米軍司令部は、『現代グループは北朝鮮に金剛山観光事業の対価として、月々正規の観光料として1998年以降約4億ドル、そして秘密裏に約4億ドル、計8億ドルものお金を支払っている』。との情報をキャッチして、CIAがこの情報を韓国政府に2001年2月に伝え、“善処”を期待したのだが、韓国政府はこれを無視し、金剛山観光の各種支援策を実施に移した……との話がアメリカ議会の調査局から2002年2月25日、明らかにされたのでした。
 この話が出た直後は韓国野党のハンナラ党が『実にけしからぬこと』として問題にするそぶりを見せたのですが、いつのまにかに追及はしりすぼみになってしまいました。
 なお、早くもこの段階から北朝鮮側が『…現代グループがわれわれに秘密資金を提供したものと信じているだの、われわれに反対する新たな謀略騒ぎを繰り広げている』。と、アメリカに対して非難声明を出していることは注目されます。

 続いてこの問題が表面化したのは2002年9月25日のことです。ハンナラ党の厳虎声(オムホソン)議員が韓国国会の金融監督委員会の国政監査で「現代商船は南北首脳会談の直前、産業銀行から緊急運営資金として4000億ドルの支援を受け、その後支援を受けた900億ドルとともに北朝鮮に流れたと見られる」。との報告をしました。そして同委員会に証人として参加した厳洛鎔(オムナクヨン)元産業銀行総裁が、「私が産業銀行総裁になった2000年8月17日直後、現代商船の金忠植(キムチュンシク)代表が、『これらの資金は現代商船が使ったものではないので、私たちが返済するわけにはいかない、政府が返済すべきだ』。と話していた。またこの問題で8月下旬に李起浩(イギンホ)大統領府経済首席、陳稔(チンニョム)経済副首相、李瑾栄(イグンヨン)金融監督委員長、金保鉉(キムボビョン)国家情報院対北担当次長などと協議もした」。との証言をしました。
 この報告と証言を信じると、現代グループになんだかわからぬ巨額の資金援助が行なわれ、そのお金は現代グループが使わずに政府が使ったらしいこと。そしてそのお金の問題について政府高官が会議を持ったこと。そしてその巨額のお金の使い道は『北朝鮮』である……ということになります。当然韓国国内は大騒ぎとなりました。野党ハンナラ党は『真相解明』を声高に唱え、与党の新千年民主党側は「これは根拠がない歪曲と扇動だ」との非難をします。
 当時の状況を振り返ってみると、2000年3月から現代グループのトップの座をめぐり、創始者鄭周永氏の子どもたちの間に争い(王子の乱)が勃発し、その結果現代グループは市場の信頼を失い、現代グループに投資していた資金の多くが回収される騒ぎが発生していました。折りしも現代グループは現代商船と現代峨山が行なっていた金剛山事業で巨額の赤字を抱えつつありました(注1)。ただでさえ経営が苦しくなってきた上に、市場からの資金引き上げという事態を迎え、特に現代商船は厳しい資金不足に直面していました。
 ですから、現代商船が銀行から多額の資金を借りるということ自体はありえた話なのです。ただ、当時の現代商船のメインバンクは外換銀行でした。メインバンクが一銭も資金貸し出しをせず、産業銀行が数百億円もの資金を貸し出したという話はかなり妙な話です。爆弾証言もあることですから、とりあえず状況を詳しく調査する必要があったはずですが、金融監督委員長が「企業に対しては、金融監督委員会は資金を追及することはできない」。と主張するなど、韓国政府のこの問題に対する調査姿勢は及び腰というより、『調査なんかしたくない』という姿勢がありありでした。第一金融不祥事追及を仕事とする金融監督委員長は李瑾栄氏で、氏は問題の融資が行なわれた2000年6月当時の産業銀行の総裁であり、そんな人物が委員長を務める金融監督委員会が疑惑追及が出来るのだろうか?との問題も取り上げられるようになります。

 そんなこんなのうちに問題の産業銀行の『融資』について、怪しげな実態が次から次へと明らかとなってきます。まず、4900億ウォンものお金を借りているのに、現代商船はそのうち3000億ウォンを負債として会計帳簿に処理されていないことが明らかとなります。企業が数百億円もの借金を会計処理していないとは、相当なうしろ暗い事情が想像されます。更に産業銀行の巨額融資についてメインバンクであった外換銀行に全く相談がなされていなかったことも判明します。メインバンクに黙って数百億円ものお金を借りるなんて企業がいったいどこにあるのでしょう?そして産業銀行側も現代商船への貸付を国会報告資料に書かずに隠していたこと、問題の融資のかなりの部分について、貸し出し期限を2度に渡って正規な手続きを省略した形で延期していたことなどが明らかとなり、疑惑はどんどんと膨らんでいきます。そんな情勢の中、9月末になって現代グループの総帥である鄭夢憲・現代峨山会長がアメリカに出張に出ます。氏は『開城工業団地の開発のため開発経験のある会社を探す』目的でアメリカに出張したとのことでしたが、この“出張”はなんと3ヶ月あまりに及び、韓国帰国は2003年に入ってからになります。

 怪しいことこの上ない現代商船に対する産業銀行の融資ですが、先の金融監督委員会で爆弾発言をした厳洛鎔(オムナクヨン)元産業銀行総裁が、10月4日の国会財政委員会の産業銀行に対する国政監査で、『韓光玉(ハングァンオク)・大統領府秘書室長が、李瑾栄・産業銀行総裁に対して現代商船に対する貸し出しを指示した』。などと、更なる衝撃発言を行ないます。
 しかしこれでも金融監督委員会や公正取引委員会や国税庁などの韓国政府側の動きは鈍く、捜査を進める意志がほとんど感じられないものでした。また先にも触れたように、疑惑追及の先頭に立つべき金融監督委員会の李瑾栄委員長が、問題の貸し付けが行なわれた当時の産業銀行総裁だったわけで、韓国マスコミや市民団体などが『これはおかしい』と、追及するのですが、まったく効果がありません。
 実際、『韓光玉氏が現代商船に対する貸し出しを指示した』との証言をした厳洛鎔氏に対して、韓光玉氏が起こした『名誉毀損』の告発の結果(注2)、ヤミ支援問題の捜査を進めざるを得なくなった検察に対して、問題の李瑾栄氏は『現代商船の口座調査を自制して欲しい』との注文をつけるなど、真相糾明の足を引っ張った疑惑が指摘されています。ちなみに検察は市民団体からのヤミ支援問題に関する告発も受けており、とりあえずヤミ支援問題の捜査を行なわねばならない立場にいました。
 そんなこんなのうちに問題の4000億ウォン融資の貸し出し契約書類には現代商船社長の署名がなく社印が捺されていただけであったことや、貸し出し契約書の本文には、貸し出し金額が4000億ウォンではなく『40億ウォン』と書かれていたことなど、数百億円のお金の貸し借りに関する書類としてはずさん極まりない内容であることも明らかとなりました。それからもぽろぽろ異常な事実が判明し、結局10月14日から『監査院』が、産業銀行に対しての監査に乗り出すことになったのです。
 監査院の監査も、当初あくまで『産業銀行』の不正常な貸し付けについて監査することを目的とし、資金の借り手である現代商船の調査は行わない予定でした。しかし監査開始後に方針を変更し、資金を借りた現代商船側の調査も行うこととなったのです。これは産業銀行の調査だけでは疑問が片付かず、現代商船の調査もすることになったようです。しかし現代商船側から資料は提出されずに監査は延び延びになっていきます。検察側も監査院の監査結果を待って捜査を進める方針をとり、事態は一見沈静化の方向に流れてしまいます。
 そんな中、金忠植・現代商船元社長が『4000億ウォンの理由なき融資を、産業銀行から受けようとしていたことを強く拒否した』ことと、『鄭夢憲・現代グループ総帥から数回に渡って現代商船に対して資金要求があった』ことが暴露されます。また、現代電子(現ハイニックス半導体)が、2000年5月にイギリス、スコットランドで経営していた半導体工場を1億6200万ドルで売却したのですが、そのうち1億ドルが現代建設が設立した、中東の実体のないペーパーカンパニーに送金されたあげく、そのペーパーカンパニーはまもなく1億ドルとともに消えてしまったという、新たな疑惑もクローズアップされてきます。

 ところで10月後半くらいから11月にかけて、肝心の監査や検察の捜査の方は一向に進展しません。折りしも韓国国内は大統領選挙の真っ最中です。大統領選の各候補はそれぞれ口先では『北朝鮮秘密支援問題』の徹底糾明を主張しますが、その割には捜査が進んでいきません。捜査が進まない大きな原因は現代商船が資料の提出を拒んでいたことにありますが、大統領選を戦うそれぞれの候補にとって、本音では『真相究明』が必ずしも望ましいことではなかった可能性が高いです。与党の盧武鉉氏にとってはヤミ支援問題は自陣営の問題ですし、また鄭夢準候補は現代グループの総帥、鄭夢憲氏の実兄にあたるので『真相究明』を歓迎しない事情があることはわかります。しかし野党ハンナラ党の李会昌氏の陣営にとってみれば、対北朝鮮ヤミ支援問題は『敵失』を攻撃するようなもので、一見消極的になる理由が見当たりません。2003年2月に北朝鮮側が行なった「ハンナラ党の密使がやってきて、『政権を握ったら、北朝鮮に対して金大中政権を上回る支援を与えるので大統領選でハンナラ党を助けて欲しい』と言ってきた」。との暴露が、ある程度真実を反映しているのでは?と思えてしまいます。
 結局新大統領に与党新千年民主党の盧武鉉氏が当選し、盧次期大統領の周辺でも様々な動きがあったのですが、結局、盧氏の意向として『疑惑の真相解明を進めていく』方針が示され、2003年の1月半ば以降になって事態が動きはじめることになります。

 ヤミ支援問題が再び動き出す直前の2003年1月11日、鄭夢憲氏がアメリカより約3ヶ月半ぶりに韓国に帰国します。しかし帰国するやいなや13日には今度は北朝鮮に向けて出発してしまいます。疑惑の渦中にありながら韓国国内に留まろうとしない鄭夢憲氏の行動に、当然のように非難が集まります。
 2003年の1月頃になると、金大中大統領周辺から『対北朝鮮送金問題は高度の政治判断を要する問題なので、検察の捜査→刑事告発などにはなじまず、政治的に解決するしかない』。との声が上がり出します。対北朝鮮ヤミ支援が実際に行なわれたことが誰の目にも明らかになりつつあるのを見て、ヤミ支援問題の当事者が政治解決の道を探り出したようです。
 そのような中、監査院は資料提出を拒みつづけていた現代商船を刑事告発する決定を下します。更に検察側は22日に北朝鮮から戻ったばかりの鄭夢憲氏を23日に出国禁止措置を取ります。検察は23日と翌24日にかけて、ヤミ支援問題関係者総勢13名に出国禁止措置を取り、捜査に本腰を入れる姿勢を見せます。
 監査院と検察の強硬姿勢に押されるように、現代商船は拒みつづけていた資料の提出に踏み切ります。その結果、2003年1月30日に監査院は『2000年6月に現代商船が産業銀行から借りた4000億ウォンのうち、2235億ウォンは北朝鮮側に渡された』との監査結果を発表。ついに北朝鮮にヤミ支援が渡されていたとの疑惑が、真実であったことが明らかになったのです。



〜第二部〜
ヤミ支援が事実であったことが判明してから
(2003年1月30日〜)







2・ヤミ支援問題の焦点

T・誰がヤミ支援を決定したのか?

 2003年1月30日、現代グループからひそかに北朝鮮へと巨額の資金が渡されていたとの噂が真実であることが明らかになりましたが、疑惑が発覚した当初から、日本円に換算して数百億円にのぼる金額を、たとえ韓国有数の現代グループといえども簡単に調達できるはずはないし、ましてや北朝鮮へ“ひそかに”渡すことなど出来るはずもない……と言われてきました。
 そこで金剛山観光などで北朝鮮との太いパイプを持つ現代グループが、韓国政府の要請を受けて韓国政府のお金を北朝鮮に送金をしたのではないか?との説が取り沙汰されるわけです。
 実際、資金調達場面や北朝鮮への送金場面で韓国政府が積極的に便宜を図った形跡があり、『現代グループの要請を受けて韓国政府が一肌脱いだ』との今現在(2003年3月末)の公式発表よりも、『韓国政府側からの要請を受けて、現代グループが北朝鮮へ送金した』との説明の方がより合理的に思えます。
 すると一体誰が北朝鮮へ送金を指示したのか?この件については金大中大統領の直接関与説も根強く、送金金額を考えると韓国政府のかなり高位の人物であった可能性は極めて高いでしょう。


U・目的は何か?

 公式説明では『現代グループが北朝鮮でのビジネス拡大のために払ったお金で、具体的には金剛山観光・開城工業団地など対北7大事業の契約費である。そして金剛山観光に日本やドイツの企業が食指を動かしており、その動きを食い止める意味もあった』。とされています。
 しかし対北7大事業の現代グループと北朝鮮側との契約はなんと2000年8月後半以降に行なわれていました。600億円もの代金を支払ったあげくに、肝心の事業契約を2ヶ月あまりも結ばないなどということが本当にありえるのでしょうか?
 送金が行なわれた時期は2000年6月の南北首脳会談の直前と見られています。そこで5億ドルは南北首脳会談の見返りとして北朝鮮に支払われたのではないかと言われています。更には南北首脳会談の成功も受賞理由となった、金大中大統領のノーベル平和賞の受賞工作の一環だったのではないか?との説まで持ち上がっています。


V・どのような方法で資金を調達し
そしてどうやってお金が北朝鮮に渡されたのか?


 対北ヤミ支援5億ドルのうち、約2億ドルにあたる2235億ウォンについてはある程度のことが分かっています。2000年6月7日、経営困難に陥っていた現代商船に対して産業銀行が4000億ウォンの融資を行い、そのうち2235億ウォン分は26枚の小切手として出金し、更に外換銀行を経て香港の中国銀行・北朝鮮口座に入金され、更に中国銀行からマカオの北朝鮮の会社に送金されたようです。
 そして現代商船に対する4000億ウォンの融資については、北朝鮮に渡されたことが確認済みの2235億ウォン以外にもかなりの金額が別ルートで北朝鮮に流れている可能性が高いと見られています。
 それ以外の現代グループの資金調達としては、現代電子(現ハイニックス半導体)の、スコットランド半導体工場の売却益のうち1億ドルが“蒸発”してしまっていて、その1億ドルが北朝鮮へ渡されたのではないか?更には現代建設が調達した1億5000万ドルが北朝鮮へ渡されたのではないか?などの疑惑が取り沙汰されています。


W・北朝鮮の誰がお金を受け取ったのか?

 北朝鮮側は終始この問題に対して過剰なまでの反応を示しています。もともと北朝鮮のコメントは極端な表現が多いのですが、『現代の対北送金が問題になるのならば、全ての南北関係を凍結せざるを得ず、その行き着く先は戦争でしかない…』などの言い分を聞いていると、この問題の真相追及は北朝鮮にとってもかなりリスキーな話であることが想像されます。
 北朝鮮の体制を考えると、はっきり言って5億ドルのお金の受け取り先は『金正日氏』本人以外は考えにくいと思われます。しかもここに来て北朝鮮の特定個人に対しても、お金を手渡していたとの話も浮上してきています。
 特別検事が行なうヤミ支援問題の捜査でも、この『北朝鮮側の受取人』の公表については波紋が大きすぎるとのことで、非公開となる方向で調整されているようです。とすると、やはり北朝鮮側の受取人は金正日氏本人かそのごく近い側近クラスの名前が挙がりかねないということなのでしょうか?


X・5億ドルの使い道は?

 5億ドルは軍事目的に使われたとの噂が当初から囁かれています。もっともこれは合法的に北朝鮮側に支払われている『金剛山観光観光料』についても同じことが言われています。どうも食糧危機にあえぐ北朝鮮人民のために使われたという話は聞こえてきません。
 ただ、本当に北朝鮮の特定個人へもお金が渡されているのならば、その部分のお金については単純に私腹を肥やすために使われた可能性も高くなります。そうなるとこれはもう『ヤミ支援』でもなくなり、限りなく『贈収賄』に近くなると思うのですが……


Y・ヤミ支援は本当に5億ドルだけなのか?

 はっきり言ってまだわかりません。とりあえず今の段階(2003年3月末)で、金の流れがある程度わかるヤミ支援が約2億ドル。その他現代グループと韓国政府が北朝鮮に渡したことを認めている金額が3億ドルということです。
 先に触れた資金調達先以外にも、現代グループ周囲には不明朗なお金の流れがあるようです。本当に北朝鮮側に現代グループがヤミで渡したお金は、5億ドルよりももっと多くなる可能性は十分にあると思います。更に他の韓国企業などもヤミでお金を渡しているとの噂もあります。


Z・ハンナラ党は北朝鮮とひそかに交渉を持ったのか?

 北朝鮮側が2003年2月に『ハンナラ党の密使が北朝鮮当局とひそかに対北支援について交渉を持った』。との暴露がありました。もちろんハンナラ党とハンナラ党の大統領候補であった李会昌氏は強く否定しましたが、のりまきが見るにこの件は意外な盲点であると思います。
 ヤミ支援問題は、2002年9月末から10月にかけて盛んに追及や論議がなされました。野党ハンナラ党も盛んに金大中政権と与党新千年民主党を追及していきます。しかし11月に入るとぴたりと流れが止まり、ハンナラ党の追及も先細りとなります。12月半ばには大統領選挙を控え、ハンナラ党からすれば対北朝鮮ヤミ支援問題は相手陣営に対する格好の攻撃材料となるのに、実に不可思議な話です。結局大統領選を経て、2003年1月半ば過ぎまでの約3〜4ヶ月、事態はあまり動くことがありませんでした。どうもハンナラ党自体にも『対北朝鮮ヤミ支援問題』の徹底追及をしにくい事情があったように思えます。
 こうなると北朝鮮の主張どおり『ハンナラ党が政権を握ったら、北朝鮮に対して金大中政権を上回る支援を与えるので大統領選でハンナラ党を助けて欲しい』。との内容の密約を結ぼうとしたかどうかまではわかりませんが、ハンナラ党側が北朝鮮と何らかの接触を持ったと見る方が、ヤミ支援問題の事態の推移を合理的に理解出来るように思えます。




(注1):現代商船の金剛山観光事業での損失額は、2001年6月の事業撤退までに2622億ウォン(約260億円あまり)に及ぶ。

(注2):約1ヵ月後、特にこれといった理由もなく韓光玉氏の側が告訴取り下げをした。


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