雪峰(ソルボン)の夢(4)
いよいよ金剛山観光メインの日であります。


温井里観光施設の建物の間から見える温井里の北朝鮮民家の一部
スキャナの拡大機能いっぱい使ったため、ボケていてすいません……
堤防の上のコンクリートの壁、その向こうに家の屋根と煙突が見えます。


11月30日(金)
さて、金剛山観光の朝は早いのです。朝食は6時台後半ないし7時から(観光参加者の数で多少前後するようだ)。そして8時を過ぎたらすぐに出発です。私たちの時は朝食は朝7時からでした。前日の夜、ミス・キムから朝食は6時半からと聞いていたので、少し早めに食堂に行ってしまったのりまき・ふとまきは、ホテルの入り口を出て少し外を歩いてみました。すると遠くの方から5人の北朝鮮兵士が歩いてきます。いや、歩いているというより、しっかり足を上げて、手を振りながら5人等間隔で行進してきます。思わずのりまきは、手を振り足を高く上げ、兵士のまねをしてしまいました。行進のまねをしたのりまきを見て、そばでやはり早起きした韓国人のおじさんが笑っていました。7時を過ぎたら朝食になりました。朝食もバイキング形式でして、まずまずの味でした。しかし状態は多少改善傾向ですが、ふとまきの便秘はまだ続いていました。
朝8時過ぎ、ホテル海金剛のフロントでミネラルウオーターとまたまた北朝鮮製の金剛山ガイドブック(今度はポケット版)を購入。そしてホテル海金剛を写真撮影しました。

ホテル海金剛とふとまき、後方の黒っぽい洋服を着ている人たちは現代社員の皆さん

私たちが乗っているバスの写真も撮りたかったのですが、『ホテル海金剛』の方向以外は撮影禁止とのことで駄目でした(-_-;)。どうやら海金剛ホテル以外の景色の写真撮影は厳しく制限されているようです。写真撮影をしている間に、みんなどんどんバスに乗り込み、私たちもバスに乗り込みました。現代の社員たちが人数を確認の上出発します。ところで私たちはホテル海金剛からすぐにバスに乗り込めたのですが、雪峰号に宿泊している人たちは、出入国管理事務所を通ってバスに乗り込んでいるようでしたので、どうやら船から出入りするたびに検査を受けているようです。
雨が降った昨日と違い、とても良い天気でした。バスの中では昨晩と同じくミス・イーが快調に解説を続けています。本当に朝も早くから元気の良い人です(笑)。そして昨晩は暗い中でしたが、今日は朝の明るい光のもと、金剛山への道のりをじっくり眺めることができました。
まず、バスは海沿いの道を進みます。昨晩は真っ暗でほとんど何も見えなかった高城の街並みや港、そして長箭湾を取り囲む、屏風のようなみごとな山並みがはっきりと見えます。山肌の2ヶ所にはとても大きな字が刻まれています。そのうち1ヶ所は現在製作中のようでした。少し行くと進行方向左側に軍事基地らしい場所があります。その先にはバスがたくさん止まっている車両基地と、発電所みたいな施設がありました。そこを過ぎると線路が見えてきます。線路は単線ですが一応電化されています。線路には草はほとんど生えていませんでしたが、結構レールは錆び付いていまして、あまり利用されていないのかもしれません。線路が見え出した後、線路の向こう側に北朝鮮の皆さんが歩いていたり自転車に乗って通行している道が見えてきました。北朝鮮の皆さんが利用している道も、舗装はされているようでしたが、ほとんど車は通っていませんでした。私たち金剛山観光客用のバスが通る道は、しっかり両脇を金網で仕切られていまして、北朝鮮兵士の監視もあります。周囲の景色を見まわしてみると、多くは松の木が生えた岩峰で、結構見栄えがします。しかし、あちこちの絶壁に政治スローガンや金日成・金正日親子を称える文章が刻まれています。
線路と並行するようになって、道は最初ゆるやかに登り、それからまたゆるやかに下りだしました。下りだすと、先の方に集落が見えてきました。後で地図で確認したら、“温井里(オンジョンリ)”という集落でした。集落に近づいてみると、異様なものを目にすることになります。集落のまわりをコンクリート製の障壁がぐるりと取り囲んでいるではありませんか!やがて道は左にカーブを切り、他の集落も見えてきましたが、どの集落を見ても、金剛山観光道路から良く見える家の前全てに、2メートル近くはあると見られるコンクリートの壁が立っていて、平屋建ての家の場合、屋根以外あまり見ることができないようになっているのです。のりまきの観察したところ、木々や茂みで中の様子があまりうかがえない家や、かなり遠い場所にある家を除き、ほぼ例外なく北朝鮮の家の前にはコンクリートの壁が立てられているようです。また、ところどころに3〜4階建てのコンクリート作りの家並みもありました。
そのうち道路は線路を横切ります。線路の先の方には駅があるようです。翌日、駅の壁面に“金剛山青年”の文字が見えましたので、金剛山青年駅というのだと思います。
まもなく道は右方向にカーブを切ります。進行方向右側に、大きな青いプレハブ造りの建物が見えるあたりで、北朝鮮の一般道と金剛山観光専用道路が交差するところがありました。さすがに道路が交差する場所は金網もありませんでしたが、かわりに北朝鮮の軍人がしっかりと見張っています(-_-;)。どうも北朝鮮の一般の道路利用者の皆さんは、金剛山観光のバスが通過する間、交差地点で待たされていたようです。青いプレハブ造りの建物には『金剛山生水(クムガンサンセンムル)』の文字が見えます。どうやら鳴り物入りで売り出したのに、水の仕入れ価格をめぐる北朝鮮側との対立の結果、事業中止に追い込まれた金剛山ミネラルウォーターの工場のようです。
かなり大きな川の橋を渡り、道は右方向へカーブを切ってしまうと、先の方に現代グループの建てた金剛山観光施設が見えてきます。夜の明かりが煌々と照らされた時もそうでしたが、昼間見てもその場所だけ異次元空間であるという印象です。川の向こう側には温井里の街並みが見えますが、堤防の上をぐるりとコンクリートの壁が屏風のように取り囲んでいます。また、温井里の反対側にも家がありましたが、かなり遠いところにあるためか、コンクリートの壁はありませんでした。その家並みの方から、通学する子どもたちと思うのですが、子どもたちがかばんのようなものを抱えて、温井里の方へ歩いていく姿が見えました。『はて……この道は使えないはずだし……ほかの道も特に交差していないようだけど……』。と思ったら、みんな小さな川沿いの、半ば川原のようなところを歩いていました。金剛山観光道路は、その川に高さの低い橋をかけていました。地元のみなさんは私たち金剛山観光客の利用する道路の下をもぐるようにして通過していたのです(-_-;)。
あと気になったことはといえば、温井里の反対側の小高い場所に、一見数台のトラックが荷おろししている最中のような景色が見えました。よく見てみると、なにやら大砲のようなものが備え付けられている、軍事基地のようでした。
車はホテル海金剛から10分から15分くらいで温井里の観光施設に着きました。バスから降りるとみんな結構記念撮影をバチバチ撮り出しました。ミス・キムに「写真撮っても良いですか?」と聞いて見ると「はい、でも北朝鮮の家はだめです」。と答えました。ここには昨晩夕ご飯を食べた温井閣や、北朝鮮のサーカスが行なわれる温井里文化会館、少し先には昨晩入浴した金剛山温泉などの建物があります。また、温井閣の隣の敷地には、北朝鮮の建物である金正淑保養所(金正淑は、金正日の母親の名)がありました。見栄えは結構良く見えるのですが、ガラスが割れたままのところもあって、どこまで実際に使われているのかよくわかりません。ただし夜は一部に明かりが灯っていて、昼間も人が出入りするのがときどき見えたので、全く使われていない建物でもなさそうです。
また、温井閣の建物には横断幕が掲げられていまして、内容を見るとどうやら『金剛山観光3周年記念セール』と書いてあります。1998年11月18日に始まった金剛山観光の3周年を記念して、2001年12月10日まで、おみやげ物等の安売りセールの会期中であるということの宣伝をしているようです。

温井閣の全景


金正淑保養所とのりまき・ふとまき

温井閣の観光施設も、しっかり金網で周囲と切り離されています。川(温井川)を挟んで反対側には温井里の町並みがあるのですが、やはり川の堤防の上に更に2メートルくらいのコンクリートの壁が作られていて、屋根以外はあまり見ることが出来ません。観光施設の端の方、温井閣と金剛山文化会館の裏手に、温井里がよく望める(とはいっても、金網とコンクリートの壁越しですが……)場所もあるのですが、そんな場所にはしっかり北朝鮮の兵士が観光客が写真を撮ったりしないか目を光らせています。兵士たちはプールの監視台に似た形の、小さな屋根がついた鉄製の台の下で見張りを続けていました。

観光施設や道路と、外界を隔てている金網と北朝鮮兵士が見張りに立つ台。
見張り台の下には北朝鮮の兵士がいて、観光客の行動に目を光らせていました。
なぜかこの見張り台には兵士はいなかった。



温井閣から望める北朝鮮の家並み。朝は煙突から煙が立ち昇っていたりしていました。

現実、写真撮影は現代の金剛山観光施設内と金剛山観光中については、予想していたよりも自由でした。露骨に北朝鮮の家々や、兵士や北朝鮮の人々の姿を撮ろうとしなければ『北朝鮮の家が写ってしまった』り、金剛山観光中の写真撮影で『北朝鮮の観光案内員の姿が入ってしまった』くらいならば問題にされないことも多いようです。
上の北朝鮮建造物の写真は、“露骨に北朝鮮の建造物を狙わない範囲”で撮ったものです。あ、金正淑保養所の遠景は全く撮影に問題ありませんでした(笑)。
さて、ここ温井閣では皆さんトイレに行き、これからの金剛山ウォーク(実は登山に近かったのですが…)に備え、軽食やミネラルウォーターの買い物をしたりしました。しかし軽食はゆでタマゴくらいしか売っておらず、買いたかったお菓子類などは全くなく、いまいち買う気になりません。ところで温井閣の建物の入り口で、やたら威勢良く、鋏をチャキチャキさせながら売り口上を言っていた人物がいました。『なんだろうな…』と思って見てみると、昨晩飴を購入した飴屋のお兄さんでした。今朝はハイキングの前だということもあってか売れ行きは順調で、軽食類を買わなかった私たちはお兄さんから飴を買うことにしたのですが、私たちが購入したものが最後で一旦売り切れてしまいました。すると飴屋のお兄さんは走って自分のお店に戻り、まもなく追加の飴を抱えて戻ってきました。また、昨晩金剛山温泉で写真を撮りまくっていたベレー帽おじさんは、あいかわらず快調にバチバチバチバチ記念写真を撮っていました(^o^)。
20分か30分くらい後、バスは再び皆さんを乗せて温井閣を後にしました。いよいよ金剛山観光に出発です。2日目の金剛山観光コースは2コースありまして、九竜淵コースと万物相コースのうちひとつを旅行申し込み時に選択することになっています。私たちは九竜淵コースを選択しましたので、九竜淵目指して出発したわけです。

参考までに……金剛山見取り図(1) 九竜淵コースへ飛ぶ
          金剛山見取り図(5) 温井里現代グループ観光施設配置図
          金剛山見取り図(6) ホテル海金剛・温井里観光施設周辺図



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