嵐の萬物相
(6)

雨の万物相が終わっても、2日目は色々とありました……


ピョンヤンモランボンサーカス団員の、舞台終了時の挨拶
韓国の皆さんは、立って拍手


さて、万物相の駐車場に戻ってみると、思った以上に多くの人が戻って来ているみたいでした。今回は決して最後の方を歩いていたつもりはなかったのですが、実際に駐車場に着いてみると、やっぱり私たちは最後の方に戻ってきたようです。どうやら悪天候もあって、多くの人が途中で登山を中止したり、望洋台か天仙台のどちらか片方しか行かずに駐車場まで戻っていたようです。
寒い中歩きつづけでしたので、とりあえずトイレです。多くの人が一目散にトイレへ駆け込みます。ところで男性のトイレは結構混雑していましたが、女性のトイレはガラガラだったようです。やはり最後まで山にいたのは男性の方が多かったのでしょうか。ふとまきがトイレから出て、ラー8号のバスに乗り込むとすぐにバスは出発しました。
バスの中ではみんな濡れた身体や洋服をタオルで拭き取っています。ずぶ濡れになった靴を脱いで、裸足で足を投げ出している人もいます。バス全体にほっとした空気が流れています。のりまき・ふとまきも靴を脱ぎ、濡れた時のために持参していたサンダルに履き替えます。
しかし、一息つくと韓国人のパワーが炸裂します!なんと、バスの中でカラオケ大会が始まったのです!!とてもいい顔をした韓国人のおじさん・おばさんが、非常に気持ち良さそうに、あえていうなら温泉場のお猿さんのような上気した顔をして、金剛山に響けとばかり朗々と歌います!!『この人たち、山で疲れなかったのだろうか??』私たちの疑問をよそに、歌声は途切れることがありません。
バスはやがて金剛山旅館のところまで戻ってきました。行きに見た玄関先の2台のベンツは、万物相から帰りの時も同じ場所にありました。いったい誰を乗せているベンツなのでしょうか?
金剛山旅館を過ぎると、まもなく温井里に到着です。温井里に着くや否や、のりまきはソフトクリームを購入します。疲れた体にソフトクリームの甘さが心地よく広がります……ふとまきは今回の金剛山観光客の数から考えて、後からでは窓口が混雑することを見越して、のりまきがソフトクリームを食べている間にサーカスのチケットを購入します。今回は25ドルの普通席にしました。なお、ふとまきはチケットを買うとき、言葉がうまく通じずに少し戸惑ったのですが、英語が少し出来る中年男性がふとまきを助けてくれたおかげで、無事チケットを購入できました。
さて、昼ご飯です。お腹が減っていたのりまき・ふとまきは、バイキングをたくさん取ってむしゃむしゃと食べます。そんな時、私たちの前に鄭さんが現れました。
「お疲れ様でした……雨で洋服と体が濡れてしまったでしょう……皆さんが着替えが出来るように、一度ホテルに戻るバスを運行することになりましたが、のりまき・ふとまきさんも良かったら乗っていきませんか?」鄭さんは私たちにそう言います。「いいのですか!もちろん乗っていきます!」私たちは一も二も無くバスに乗って、着替えをするためにホテル海金剛に戻ることにしました。「では、支度ができたらすぐに呼びにきます」。鄭さんはそう言って私たちの前を後にしました。
『いつ鄭さんが呼びに来ても良いように、急いで食事をしなければ……』のりまき・ふとまきが、お互いにそんなようなことを言い合っていたら、鄭さんがまたまた私たちの目の前に現れました。さっきからまだ2分と経っていません。「バスがホテル海金剛に戻る準備が出来ました……急いでください」。鄭さんはそう言います。やむなく私たちは目の前の食べ物の中で、とっさに詰め込めるものを口の中に放り込んでからバスへと急ぎます。
鄭さんに連れられて、私たちはター2号のバスに急いで乗り込みます。私たちが乗り込むとバスはすぐに出発します。山も雨でしたが、里も雨であります。金剛山観光客を監視している北朝鮮の兵隊の皆さんも、雨に濡れながら勤務していました。
バスはいつも通り温井閣から15分ほどでホテル海金剛まで戻ってきました。バスを降りる時に鄭さんから、「20分後までにバスへ戻ってきてください」。と言われました。ところでのりまきが港の波止場を見ると、雪峰号の姿はありませんでした。実は雪峰号は束草港との往復の最中で、雪峰号に宿泊している皆さんは着替えに戻ることが出来なかったのです。(嵐の万物相・3の注釈参照)
ホテル海金剛に入ると、なんと例の3人組のバンドがしっかり演奏をしています。いくらなんでも観光客が誰もいないホテルで演奏をしているとは思えませんので、着替えのために観光客がホテルに戻ることになったので、急遽演奏をし始めたのだと思いますが……ご苦労様です。
ホテルの自室に戻ると、のりまき・ふとまきは急いで着替えです。下着からなにから全部着替えてさっぱりとしました。それからずぶ濡れになった靴も脱いでサンダルに履き替え、脱いだ靴やカッパなどを室内に干し、更にはひどく曇ってしまった一眼レフをドライヤーで乾かしてみたのですが、充分には乾いてくれません。仕方なくカメラも室内で干しておきました。
あれやこれやで20分はあっという間です。私たちは温井閣へ戻るバスに飛び乗りました。私たちがバスに乗ると、やはりバスは間もなく出発です。雨の振りしきる中、温井閣へ戻ります。やはりバスに乗ること約15分、温井閣に戻ります。温井閣に着く直前、もうすぐサーカスが始まる金剛山文化会館の後の方に、ピョンヤンのナンバープレートのバスが止まっていて、サーカスの団員さんとおぼしき人たちが降りてきていました。
戻ってみるとサーカスが行われる金剛山文化会館の前はチケットを求める人で混雑しています。ふとまきの予想が見事当たりました(^o^)。私たちは昼ご飯を途中で中断した形になって少々食べたりない感じだったので、今度は二人してソフトクリームをぱくつきます(^○^)。
サーカス開始前にのりまき・ふとまきは、ホテル海金剛で乾かしている最中のカメラが、万一使えなくなってしまうことを考え、コダックのお店で使い捨てカメラを購入します。この使い捨てカメラ、ひょんなことから大活躍することになるとは、この時はつゆ思いませんでした。さて、そんなこんなのうちにサーカスが始まります。今回は観光客が多かったこともあって、会場内は大混雑です。それにしてもせっかく海水浴場がオープンしたのですし、また後から話が出てきますが、金剛山温泉は体にも良いようです……今回の場合、風雨が強い状態でしたので、海水浴場に行きたい人はほとんどいなかったとは思いますが、せめて山を降りた後の午後ぐらい、例えば、@サーカスを見る、A海水浴場に行く、B温泉にじっくりつかる……の、3パターンの中から自由選択ができないのかな〜〜と思います。数百人の観光客が同じメニューをこなさなければならないところに、現在の金剛山観光の大きな課題があるような気がします。
さて、前回と同じくのりまき・ふとまきはサーカスを観覧します。座席は思ったよりも前の方でしたが、端に近い場所で、斜めから舞台を見るような感じでした。今回は現代の中年職員さんが最初にステージに出てきました。先ほどふとまきがチケットを買うときに助けてくれた人です。この人は、サーカス(平壌モランボンサーカス)についての説明や観覧上の注意をしました。
サーカスが始まりました。オーケストラの『金正日将軍の歌』生演奏の中、まず最初に出演者が壇上に整列して、ご挨拶です。このあたりは前回と全く同じです。演目も多くは前回と同じでしたが、出演者は違っていたような気がします。このところ公演回数が増えているのでしょうか?演技の切れが、全体的に前回よりも鈍いような気がしました。特に最後の空中ブランコでは、演技の途中で一人の男性が失敗して落下してしまったら、なんとそのまま演技そのものが“終了”となってしまいました。前回は落ちても落ちても再挑戦したのに……そして、尻切れトンボの終了でバツが悪そうな顔をしていた空中ブランコ団員たちに、舞台の奧の方からサーカス団の団長とおぼしき恰幅のよい中年男性が、激しく観客席の方を指差しながら、『ちゃんとお客様に挨拶をしろ!!』といった感じの指示を飛ばしているのを見ました。それを見た空中ブランコ団員たちは、あわてて観客たちにきっちりと礼をします。どこの世の職場にもありそうな光景を見て、のりまきはなんとなく少しほっとしたような感じがしました。
空中ブランコ団員の挨拶の後、サーカスは大団円です。みんな整列して一礼をした後、金剛山観光客の皆さんに手を振ります。オーケストラの皆さんも手を振ります。韓国の観光客の多くの皆さんも、いっしょうけんめい手を振ります。

モランボンサーカスのオーケストラの皆さん。皆さん左胸にバッチをつけていますね。

サーカスが終わると、のりまきはモランボンサーカスのビデオを買いました。サーカスの後は、みな買い物もそこそこに、温泉場へと大移動です。私たちもすぐにバスに乗り込み、金剛山温泉に向かいます。ふと外を見ると、さっき金剛山文化会館の後ろで見た、ピョンヤンのナンバープレートのバスが動き出しているのが見えます。もちろん中にはピョンヤンモランボンサーカスの団員たちが乗っています。こちらから手を振ると、団員さんの何人かは手を振り返してくれます。ピョンヤンナンバーのバスは、まもなく金剛山旅館の方に進んでいきました。
バスは続々と金剛山温泉に着きます。また温泉は大混雑になるのかな〜〜とも思いましたが、3泊4日の観光客が今朝帰って、まだ新たな3泊4日の観光客がやってきていないので、昨日ほどは混んではいませんでした。しかし、昨日より多少少ないとはいっても、総勢500人以上が一気に入浴するのです。男女双方のお風呂に200人以上が殺到するわけで、やはりかなりの混雑でした。
のりまきが身体をひととおり洗い終わり、広い湯船でほっとひと息ついていると、ガイドの鄭さんがやはり湯船に入ってきました。少々お疲れの様子で、まず湯の中で足の曲げ伸ばしをしていました。それからのりまきはサウナやお風呂をハシゴして、最後に、かなりの人がお風呂から出た後の、のびのびと入浴できるようになった頃、外の露天風呂に向かいました。雨はまだ降っていましたが、露天風呂に長くつかるためには雨もまた良いような感じでした。
露天風呂には鄭さんがいました。私の姿を見ると、鄭さんは私に話し掛けてきました。「この温泉はとっても効き目が良いことで全国的にも有名な温泉で、その昔、朝鮮王朝の国王が、重い皮膚病にかかって、どんな治療をしても治らなかったのが、この温井里の温泉に15日間つかったらきれいに治ったということです」。鄭さんは私に対して、まずこんなことを話します。「そういえば今回は、男湯と女湯が前回と逆ですね〜〜」。私がそう言うと「はい、4週間ごとに男湯と女湯は交換しているのです」。と鄭さんは答えてくれます。
「ところで、あの山にいた北朝鮮の人はどういう人たちなのですか?」続いて私は、鄭さんに対して質問してみます。「あの人たちは一応、環境保護巡察員と言われていて、環境を守るために見守っている人ということになってますが、本当の任務はなかなか口では言いにくいことなのです」。日ごろ日本語を使っている私たちでも、この場面で、『口では言いにくい』という微妙な表現をするのは難しいことです。鄭さんの味のある表現にのりまきは唸ってしまいました。更に鄭さんは、「あの人たちの本当の任務は、たとえば大使館に勤めている外務省職員以外の、特別な仕事をしている人たちの任務のようなことをやっているのです」。と続けます。それでは環境保護巡察員とは、いったい何を探ったり調べたりしている人たちなのでしょうか……まさになかなか口では言いにくい話であるに違いありません……
「鄭さんはどこで日本語を勉強されたのですか?」鄭さんの高い日本語表現力を感じたのりまきは、こんな質問もしてみました。すると、「私の叔父が日本語教師をしています。その叔父に日本語を学びました」。との答えが返ってきます。また、「叔父によれば、“みぞおち”という言葉が使えるかどうかで、どれだけ日本語を知っているかどうかがわかるということです、韓国の人にとって、みぞおちという日本語を覚えて使うのは難しい」。という、興味深い話もしてくれました。
「鄭さんは日本に来たことがありますか?」と聞いてみると「はい、以前新潟に行ったことがあります。新潟では、温泉とか色々なところを廻りました」。とのことでした。それから後も、鄭さんの故郷の話など露天風呂の中で色々と話しこんでしまい、のりまきは結構な長風呂になってしまいました。お風呂から上がると、今回はふとまきがのりまきを待っていました。
ふとまきは、のりまきを待っている間に金剛山温泉の建物をひと廻りしてみたようです。「2階の食堂で、南北で別れ別れになった家族が、金剛山で再開した場面の写真を飾っているようだよ」。お風呂から上がったばかりののりまきに、ふとまきはそう言います。さっそく二人で金剛山温泉2階の食堂に行き、中を覗いてみます。すると確かに食堂内に南北離散家族の再会場面の写真が、大写しにされて何枚も飾られているようです。金剛山温泉前のキャンプ場でキャンプをする子どもたちが、まもなく雪峰号に乗ってやって来るために、食堂内はバイキング形式の食事の支度がなされています……中に入ってよいものか少し躊躇しましたが、まだ子どもたちは誰もいないようですし、思い切って食堂に入ってみます。
食堂内には、先刻サーカスの前に観客に説明や注意をしていた中年男性がいました。彼はふとまきがサーカスのチケットを買う際に助け舟を出してくれた人物でもあります。ふとまきは男性に先ほどのお礼をします。すると、「この写真は、南北別れ別れになってしまった家族が、金剛山で再会した時の写真です」。男性は私たちに英語で説明をします。
再会を果たして固く抱き合っている写真、大泣きをしている写真、しんみり語り合っている写真……写真は全部で20枚くらいあったでしょうか……そして、写真に写っている韓国側の家族が書いたと思われる、手書きの感想文を拡大したものが、ひとつひとつの写真につけられています。「金剛山でこの4月と5月に、別れ別れの家族が再会をしたのです」。男性はそう説明を続けました。先に説明したように、この場所は金剛山でキャンプをする子どもたちが食事をする場所です。子どもたちに南北離散家族の皆さんの再会場面の写真を見たり、離散家族の皆さんが書いた感想文を読んでもらうことによって、“学習”をしてもらうつもりなのでしょう(注1)。
さて、そんなこんなをしていると、時間は午後の7時をまわりました。そろそろ温井閣に行って夕食を食べなければいけません。雨は相変わらずかなり強く降りつづけています……温泉から温井閣まではバスなんか乗らずに歩いた方がいいのですが……仕方ありません、のりまき・ふとまきは今回もバスに乗ります。しかし2人の男性が雨の中、バスに乗らずに歩き出しました。私たちの乗ったバスは、2人の徒歩の男性を追うように金剛山温泉を出発します。
出発して間もなく、バスが温井川を渡る橋にさしかかった時です。突然バスが停まりました。『あれ?どうしたのかな??』バスの乗客は皆、顔を見合わせます。『大雨のおかげで温井川が増水して、橋が渡れなくなったか??』そう思って外を見ると、橋の向こう側で徒歩で温井閣に向かっていた二人の男性も立ち止まっています。男性の先には、カーキ色の軍服を着た北朝鮮の兵士が5〜6人行列を作っています。そして北朝鮮の兵士の向こう側でも、バスが停まっています。
『なんだろう??』と思い、見ていると北朝鮮の兵士のうちの一人が、橋の向こうで立ち止まっている男性二人に、『どけ!!あっちへ行け!!』という感じで手を振ります。同じ人払いをするのでも、強圧的で実に横柄な態度です。男性二人はあわてて後ずさりします。そして、つられるように私たちのバスまで少しバックしました。いったいこれから何が起こるのでしょうか…兵士から20メートルくらい離れていた私たちのバスの中でも、多くの人が立ち上がって、かたずを飲んで事態を見守っていました。
すると、道から少し外れた奧の方にある金剛山観光客の監視所から、兵士がやって来て、敬礼をしながら行列を作っている兵士になにやら報告を始めました。報告が終わると、今度は行列の中の兵士の一人が奧の監視所に向かい、これまで監視所にいた兵士と、残りの兵士がまた行列を組み直して、手足を高く振り上げながら行進し始めました。どうやら金剛山観光客監視兵の交替と引き継ぎの場面に出くわしてしまったようです。
行進を始めるともう特に問題はないようで、徒歩の人も私たちの乗ったバスも、先へと進むことが出来ました。
夕食は7時15分過ぎからいただきました。ホテル海金剛に戻るために昼食が中途半端になってしまったので、のりまき・ふとまきとも夕食は結構たくさん食べました。夕食の後はお土産購入です。今回は前回同様北朝鮮タバコ詰め合わせと、前回はなかったお菓子を二種類。木の実のジュース、そして“宝石製”と書かれた北朝鮮製の実に奇矯なるネクタイと、ちょっと味のある帽子、そして絵はがきと金剛山のビデオを買いました。最後にのりまき・ふとまきのお酒好きの知人と楽しむために、北朝鮮のお酒を4種類を買いました。正直、今回は結構お土産を買ったなあ〜〜という感じです(^o^)。
ところで、おみやげを買っている間に、私たちは実に奇矯なる言動をしている女性の姿を目にしました。彼女は金剛山みやげ物売り場をくまなく巡り、買い物をすることなくひたすら金剛山グッズをデジカメで撮っていたのです。その徹底ぶりに店員さんもびっくりしていた感じです。ところで彼女はのりまき・ふとまきと同じバスで万物相に行った人でありました。
おみやげ物を買っている間に午後8時もまわり、そろそろホテル海金剛行きのバスに乗る時間が迫ってきました。大勢の人が温井閣でバスを待っていて窮屈な感じです。のりまき・ふとまきは一度外に出て、隣の金剛山文化会館(サーカス場)のところに行ってみました。サーカス場のひさしの下は雨に濡れずに済みます。混雑している室内と違って、そこならばきっと誰もいない中で静かにバスを待てるだろうな〜〜と思って行ってみると、予想が外れて(?)3人の男性がいました。3人のうち一人は、行きの雪峰号で長箭湾と長箭の港を隠し撮りしていた人物でした。だいたいどこでも人と違うことをする一風変わった輩は、なんとなく集まってしまうのでしょうか???
もうすぐバスが出発するかな〜〜という時、トイレをするためにのりまき・ふとまきはもう一度温井閣の建物に戻りました。そんな時に温井閣の駐車場にバスが到着しました。のりまきよりも一足早くトイレを終えたふとまきは、『何だろうな〜〜』と思って見ていると、バスから子どもたちがいっぱい降りてきました。雪峰号が金剛山に到着して、新たな3泊4日の金剛山キャンプ体験者の少年少女たちがやってきたのです。そして、子どもたちと一緒に、前回の金剛山旅行でお世話になったミス・キムが降りてきました!!ふとまきは『仕事中だろうし……声をかけて良いのだろうか?』と思ったのですが、ちょうどそばにいた鄭さんが、ふとまきの様子を見て「せっかくですから、キムさんをここに呼びましょう」。と言って、私たちのところに連れてきてくれました。
少し遅れてトイレから出てきたのりまきに、ふとまきが「キムさんだよ!キムさんが来たよ!!」と、言いにきます。のりまき・ふとまきとも大喜びです♪さっそくミス・キムと鄭さん、そして私たちとで記念撮影です♪。ここでさきほど買ったコダック社の使い捨てカメラがとっても役に立ってくれました♪♪
「前回の写真、ありがとうございます。写真届きました」。と、ミス・キムは言います。「お元気ですか?」と、ふとまきが聞いてみると。「元気ですよ。でも、忙しくて忙しくて……夏休みなんて取れません」。「明日は山ですか?」とのりまきが聞くと「はい、九竜の滝・万物相・海金剛全部行きます」。「海水浴場も?」「はい、海水浴場も行きます!」。たしかにこれはハードスケジュールです……
そんな時、元気一杯の子どもたちが私たちのまわりを走り回りだしました。ミス・キムは「これはみんな私の子どもたちですよ」。と言って笑います。半年前に見たミス・キムよりもなんだか落ち着いて、しっかりとした印象になった感じがしました(^o^)。
「では、仕事があるので……」。ミス・キムはそう言って私たちの前から仕事に戻っていきました。
それから、なんとなく鄭さんを始めとして、現代の社員さんが数人で、私たちのまわりでお話をはじめました。万物相から下山途中、記念撮影のシャッターを押してくれた、ぽっちゃりした若い女性と、もう一人すらっとした若い女性が私たちに日本語で「私たち日本語勉強しています。鄭先輩が、私たちに日本語を教えてくれます」。と話します。鄭さんは後輩のこの言葉に照れながらも嬉しそうです「はい、ぼくが日本語教えています」。と、言う鄭さんの声は弾んでいます。「鄭さん、私たちの中で一番日本語上手いです」。と、後輩女性のヨイショは続きます(^o^)。そんなこんなを他の現代職員さんたちは、にこにこしながら見ています。
「ところで鄭さん、温井里の食事は誰が作っているのですか?北の人が作っているのですか??」ふとまきが、鄭さんに聞いてみたかったことを質問します。「温井里の料理は、現代百貨店の社員が作っているのです。みんな南の人です」。鄭さんはそう答えます。ふとまきは続いて、「食事に出てくる肉や野菜はどうしているのですか?」と、質問を続けます。この質問に鄭さんは、「野菜だけは、金剛山にある農場でとれたものを使っています。あとの肉などは全て韓国から運んでるのです」。と答えました(注2)。それにしても北の人は金剛山近くの海で魚を獲っているのですから、魚くらい地元のものを使ってもよさそうなのですが……
続いてのりまきが、「サーカスの人たちは、サーカスの後はどこに泊まるのですか?」と聞いてみました。すると「サーカス団の人たちは、北朝鮮では“人民俳優”などと呼ばれ、大臣よりもよい待遇を受けているのです。金剛山でも一流ホテルに泊っています」。と鄭さんは答えてくれました。
そんなこんなのうちに、ホテル海金剛に戻る時間となりました。みんなバスに乗り込んで、ホテル海金剛へと帰ります。北朝鮮の皆さんが住む家の、ささやかな明かりは変わりませんが、金剛山の夜道も数を重ねていくと、妙なことに気づいてきます。『あれ?いつも同じ場所で同じように明かりが点いているなあ〜〜』。どこのどのような家であっても、色々な事情で、夜、明かりが点いている時と点いていない時があってもおかしくないのに、バスの車窓から見える人家の明かりは、なんだかいつでも同じように点いているような気がしてきたのです。その上、金剛山観光客の通る道路から見える村々の明かりの方が、長箭の街明かりよりも明るい感じもしてきました。『う〜ん〜〜これはひょっとして観光客に見せるための“明かり”なのかなあ』。のりまきはそんなことを考えてしまいました。
さて、ホテル海金剛に戻ってから、まずは万物相でひどく曇ってしまった一眼レフをチェックしました。曇りはきれいに取れておりまして一安心です。それから様々な出来事のあった7月19日を振り返りつつ、のりまき・ふとまきはラウンジで乾杯をしました。酒の肴はホテル海金剛入り口隣にある、屋台のようなところで焼いてもらったスルメであります(^o^)。お疲れでしたがまさに充実の一日でありました(^○^)。就寝は午後10時すぎ……のりまき・ふとまきともに、もちろんぐっすりお休みであります(^o^)♪


(注1):2002年4〜5月に、第四回南北離散家族再会が金剛山で行われた。4月28日から30日にかけて韓国側で選ばれた99人の離散家族とその人たちの北側の親族186人、5月1日から3日までは、北側で選ばれた100人の離散散族とその人たちの南側の親族486人が、別れ別れの家族との再会を果たした。現実にいる離散家族の数と較べてあまりにも少ない“選抜家族”……親族と面会できる家族として選抜されるまでの間にも様々なドラマがあるようです。

(注2):長箭の町はずれに、高城郡人民委員会(日本で言えば地方自治体の長)と、現代グループとの契約によって作られた金剛山営農事業所のビニールハウスがあり、そこで金剛山観光客の消費する野菜類を作っている。



嵐の万物相(5)へ戻る

蓬莱の巻に戻る

金剛一万二千峰へ戻る

のりまき・ふとまきホームへ戻る


嵐の万物相(7)へ進む