内金剛遥かなり
(第十一章)



平壌の鉄道事績館に保存されている、金剛山電気鉄道の車両



 6月23日(水)、良く眠って快適なお目覚め……と行きたかったのですが、のりまきは朝起きてみるとしっかり頭痛がしました。『どうしてだろう?』と思っていると、左肩にしつこい痛みがあることに気づきました。どうやら2日前、内金剛で転倒した際の打撲の後遺症があるようです。そこでさっそくバスタブにお湯を張って、少しゆっくりとお湯につかりました。
 お湯につかったおかげで、だいぶ体が楽になった気がします。これでなんとか北朝鮮観光の最終日を乗り切ることが出来そうです(笑)。朝食は8時頃からでした。今日の朝食は別室ではなく、広い部屋でいただきます。ところで食事を運んできたウエイトレスが、ふとまきに対して「男性ですか女性ですか?」と、あまりにも単刀直入な質問をしてきたのにはびっくりしました。「女性ですよ」。と答えると、彼女は笑っていました。その後、おかずやコーヒーを運んでくる際も笑いを隠し切れない表情をしています。
 食事終了後、ふとまきはこのウエイトレスさんと記念撮影をしました。ウエイトレスさんはしっかりふとまきと腕を組んでくれました♪

ふとまきに『男ですか女ですか?』と聞いてきたウエイトレスさんとふとまき

 食事終了後、羊角島ホテルをチェックアウトして出発をしました。ホテル出発後、まずはお土産購入のために高麗ホテルに向かいました。今回の旅行では、結局高麗ホテルに行かないのかな〜〜と思っていたのですが、最後の最後になってやっぱり行くことになりました。のりまきはこれまで一回も高麗ホテルに宿泊したことがないのですが、北朝鮮の旅行中、必ず一回は高麗ホテルに立ち寄っています。
 高麗ホテルで手早くお土産を購入した後、私たちは事実上今回の旅行の最終見学地である鉄道事績館に向かいます。鉄道事績館は平壌駅のほど近くにありました。事績館の入り口前で、女性の案内員が私たちのことを出迎えてくれました。
 鉄道事績館の入り口をくぐると、まず壁画のようになっている巨大な絵画が私たちの目の前に現れました。この絵画、何かの式典を描いたもののようで、式典に出席した金親子を囲む華やかな雰囲気がナイスです!

鉄道事績館入り口の壁画

 続いて鉄道工事現場を描いた、実に見事なジオラマに案内されました。このジオラマも金親子の現地指導の場面を描いているのですが、手前が模型、後方が絵画となっていて、一目見ただけでは模型と絵画の境目がまったくわからないほど、模型も絵画も精巧に作られていました!のりまきは正直、このジオラマはある意味具象芸術の極北ともいうべき傑作だと感じました。Sさんも「(北朝鮮に来て)本当に毎日びっくりすることばかりだ!」と、感嘆の声を挙げていましたが、本当に同感です!

鉄道事績館展示物の目玉である、鉄道工事現場のジオラマの一部
実は手前が実物模型で後部が絵画となっているのだが、この写真では全くわからない


 壁画とジオラマに感動した後は、お決まりの金親子賞賛大会が始まりました(笑)。それにしてもこの事績館は設備は実に立派なのですが、日頃、子どもたちの社会科見学などの見学者が来るわけではなさそうで、部屋の電気も私たちが部屋に入る前に点け、帰るときには消すようになっていました。ではこれだけの施設をいったい何のために維持しているのでしょう??
 展示物の中には、時々?と思ってしまうものもありました。特に絵画は、どういう脈絡で飾られているのだか、どこが鉄道と関係しているのかよくわからないものがありました。たとえば雉が遊ぶ花咲く公園のような場所で金正日氏がくつろいでいる絵画など、本当にいったい何のために飾っているの??と思ってしまいます。

鉄道事績館にあった金正日絵画
この絵のいったいどこが鉄道と関係しているのだろう?


 やがて金親子の賞賛大会が一段落して、のりまき待望の金剛山電気鉄道の車両との再会とあいなりました。車両類は事績館の本館ではなく、少し離れた別館のような場所にまとめて置かれていました。
 別館の中に入ってみるとありました!入り口に一番近いところに金剛山電気鉄道の車両が!!案内役の女性はまず、展示されている4台の車両や貨車などについて説明をしました。鉄道事績館の別館には金剛山電気鉄道の車両以外にも、南満州鉄道(満鉄)の貨車なども保存されていました。
 案内役の女性によれば、この金剛山電気鉄道の車両は『もともと日本植民地時代から使われていた電車だったが、朝鮮戦争時に破損したのを修理してここに展示している』。とのことでした。そうすると日本敗戦後も金剛山電気鉄道は運行されていた時期があったようです。
 車両の説明の後、私たちは金剛山電気鉄道の車両内に入ることも出来ました。どこまで日本時代の金剛山電気鉄道の車両のままにしてあるかはわかりませんが、内部はきれいに保存されていました。座席部分ばかりではなく、荷物室やトイレも保存されていました。また、2等室の一部は白いシートがかけられていて、L課長によればこの場所にかつて金日成氏が座ったことがあるとのことでした。

金剛山電気鉄道の三等室


金剛山電気鉄道の二等室
白いシートが被せられた場所に、かつて金日成氏が座ったことがあるという


 のりまきは金剛山電気鉄道の車両の見学が出来て、今回の旅行の目的を全て達成することが出来ました。まず、三年越しの夢であった内金剛に行くことが出来ましたし、金剛山電気鉄道の車両を見ただけではなく、車両内に入ることも出来ました。本当に本当に嬉しかったです!!

 車両見学が終わった後、鉄道事績館入り口で記念撮影をして見学は終了です。それから本屋さんに立ち寄った後、一路空港へと向かいました。空港への道すがら、ガイドのHさんは「今回の旅行は、のりまきさんの希望はだいたい叶いましたが、E.Tさんの希望は叶えられないことが多く、申しわけありませんでした」。と言って、E.Tさんに謝っていました。それにしても短い日程の中、旅行者の希望を叶えようと努力をするガイドさんも、本当に大変そうです。
 空港に到着すると、駐車場に真新しいバスが何台か停まっています。見ると韓国の現代のバスです!金剛山ー元山間では現代のトラックを見ましたし、今度は現代のバスです。
 空港の駐車場で、今回お世話になった運転手さんとお別れです。お別れに際して、みんなそれぞれ運転手さんと記念撮影に納まります。5日間、特に内金剛に行った3日目は本当にお世話になりました!感謝です!!

 空港に入り、ガイドのHさんは最後の仕事として、私たちのボーディングパスの発券と、荷物預けの手続きを行いました。手続きは極めてスムーズに進み、私たち4人とL課長とガイドのHさんは、出発ロビーに向かいました。なお、携帯電話を返してもらったSさんによれば、ガイドさんに預かってもらった際には電源を切っておいた携帯電話が、返してもらった時にはしっかり電源が入っていたといいます。他人の携帯電話の電源を勝手に入れて、いったい何をやっていたのでしょう?それにしても電源をもとのように切っておかなかったとは、ずさんな話であります。
 出発ロビーに着いてみて驚きました!滑走路にな、なんと韓国の大韓航空機が停まっているではありませんか!空港内の到着、出発案内板にもしっかりと“KE(大韓航空)”と、“インチョン(韓国の仁川国際空港)”の文字があるではありませんか!「どうして大韓航空機が来ているのでしょう?」と、L課長とガイドのHさんに聞いてみるのですが答えはありません(苦笑)。韓国側からの金剛山観光に参加してみても感じることですが、本当に韓国と北朝鮮との関係は謎だらけです。

平壌空港の到着表示板、しっかり仁川から来た大韓航空の案内が出ています


平壌空港の滑走路に停まっている大韓航空機

 さあ、いよいよ出発の時間になりました!私たちは出国カウンターで北朝鮮の出国手続きを行ないます。L課長とガイドのHさんは、私たちにずいぶん長い間、手を振り続けていました。本当にお世話になりました!!やはり感謝です!!
 ところで北朝鮮出国時になって、入国時に一緒だった謎の4人組とまた一緒になりました。E.Tさんが思い切って、「どうして北朝鮮に行かれたのですか?」と尋ねてみましたが、「ちょっと……」と言ったきり、答えはありませんでした。ただ、私たちが金剛山に行ったことを話すと「いいですね〜」とは話していました。それにしても本当に謎の4人組です。

 飛行機に乗り込んでまもなく離陸です。4泊5日、本当に“濃い”北朝鮮でした!それにしてものりまきが次に内金剛に行けるのは、いつの日になるのでしょう??
 平壌から瀋陽行きの飛行機では、ユニークな機内食が出ます。ハンバーガーです。この北朝鮮のハンバーガー、結構評判が良いと聞いていたので楽しみにしていましたが、食べてみるとハンバーガーという食べ物を朝鮮風に上手くアレンジしているのが感じられ、たしかに美味です。ぜひまた食べてみたいです!

高麗航空の機内食のハンバーガー、美味!

 約1時間のフライトの後、私たちの乗った飛行機は瀋陽に到着しました。瀋陽からは飛行機を乗り継いで、午後7時過ぎには関西国際空港、そして午後10時半過ぎに羽田まで戻ってきました。のりまき・ふとまきが自宅に戻ったのは日が変わって6月24日の午前0時過ぎでした。本当に盛り沢山な旅行でありました!




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