嵐の萬物相
(10)

金剛山から戻った後の、韓国での出来事です。


束草海水浴場のシンボルマーク、なかなかかわいい♪


雪峰号が束草に到着して、現代グループの鄭夢憲会長が乗っていた前回と違い、今回は待つことも少なく下船となりました。それから韓国の入国審査です。審査は特にこれということもなく、淡々と進みます。
入国審査の行われている場所を過ぎると、現代の社員の皆さんが列を作ってお見送りをしています。のりまき・ふとまきはお世話になった皆さん、特に鄭さんに挨拶をします。鄭さんは見るからに疲れていまして、隣に立っていた前回の金剛山観光でも一緒だった女性職員に『また金剛山でお会いしましょう……と言ったら?』という言葉に促されるように「のりまきさん、ふとまきさん、また金剛山にいらしてください」。と言います。鄭さん、本当にお疲れ様!!
さて、束草に戻ったこともあり、kuniさんに電話をしようと思ったのですが、束草港にある公衆電話はテレフォンカード専用で、テレフォンカードを持っていなかったのりまき・ふとまきは、はたと困ってしまいました。とにかくテレフォンカードを買うか、コインでもかけられる公衆電話を探すことになり、荷物をふとまきに見てもらい、のりまきは港周辺を歩いてみることにしました。
港のすぐそばにコンビニエンスストアーが見つかりました。このコンビニ、開店したばかりのようで、ラメ入りの洋服とミニスカートをひらひらさせた女の子が二人、店の前でマイクを持って歌いながら客寄せをしています。のりまきはそのコンビニでテレフォンカードを購入。港に戻りました。
港の公衆電話からkuniさんに電話をしてみると、「すいません……だんなの仕事で、今、車を使っているので、港まで迎えに行けないので、アパートまで来てもらえませんか」。とのこと。ふとまきと相談して、えっちらおっちら荷物を背負ってバスでkuniさんのアパートまで行くことにします。
バス停に着くと、目の前をソウル行きの金剛山観光客専用バスが通過していきます。私たちのことに気づく人もいて、何人か私たちに手を振ってくれます。のりまき・ふとまきも手を振りかえします。また、バス停そばの食堂にも、金剛山帰りの人が数人、夕食を食べに入っていきましたが、その人たちものりまき・ふとまきに挨拶していきます。今回の旅行、人数が多くてわらわらとした感じで、前回と較べてなかなか韓国の人たちとの距離が縮まりませんでしたが。終わりの頃になってようやくいい感じになってきました。3泊4日観光でしたらもっと色々あって面白かったのではないかと思います。
のりまき・ふとまきがバスを待っていると、中年男性が現れました。赤ら顔をしていてどうやら一杯ひっかけた後のようです。彼は私たちに色々質問してきました。そんな時にバスがやってきました。私たちはバスの運転手さんに『高速バスターミナル』と言って、料金を払います。赤ら顔した男性も、私たちと一緒にバスに乗り込んできました。どうやら私たちが日本人であることがわかったようで、バスの空席に座るように勧めてくれたり親切にしてくれます。また、バス車内できゃあきゃあ言っている若者を叱りつけたりもしていました。
バスはやがてkuniさんの家が近くにある、高速バスターミナル前に着きます。中年男性は私たちと一緒に降りてきて、『高速バスターミナルはあっちだ』と教えてくれます。私たちがお礼をすると、男性は目の前にあった中華屋に入っていきました。なんとなくこの男性、親切心でここまで来てくれたような気がしました。
私たちは高速バスターミナル脇を通り、kuniさんのアパートの方へ向かいます。するとちょうどkuniさんとだんなさんが乗った車に出会いました。kuniさんが「今、ちょっと出かけますが、泊る予定のアパートの部屋で待っていてください。一緒に夕ご飯食べましょう」。と言います。そこでのりまき・ふとまきはとりあえずアパートの泊る予定の部屋まで向かいます。
アパートの宿泊予定の部屋に着くと、部屋にはまだその家の家族が残っていました。そして日本語の出来る奥さんの方が「せっかくですから、みんなで夕食食べに行きましょう!kuniさんも来られるようですし、kuniさん戻ってきたらみんなで行きましょう」。と、私たちに言ってきます。思いもかけぬ提案にふとまきと顔を見合わせてしまいましたが、せっかくなので皆で夕ご飯を食べに行くこととしました。
kuniさんは意外と早く、約10分後にやって来ました。何を食べに行くか少し話し合った結果、私たちに部屋を貸してくれるご主人の提案する“トルソッパプ”というものを食べにいくこととなり、夕食に出発です。この時のりまき・ふとまきは、“トルソッパプ”とはどんな食べ物であるか、全く想像がつきませんでしたが、『おいしいよ!』という部屋貸しのご家族の言葉に従ってみました。ご主人が運転の車に乗って約10分、トルソッパプのお店に着きました。お店は結構大きくてきれいです。
束草の話、韓国の食べ物の話、そして金剛山や白頭山の話などで盛り上がる中、石の器に入ったトルソッパプが現れます。もち米の中になつめや豆や朝鮮人参が入った、とっても健康的に見える食べ物です!口に入れてみます……なつめの仄かな甘味が嬉しい、素朴なる美味であります!!たちまちのうちに食べ尽くし、最後に石にこびりついた“おこげ”にお湯をかけ、お粥のようにしていただきます。これもまた香ばしく、美味でありました!

トルソッパプ(左)と、おごげにお湯を注いでいる場面(右)

食事中、皆さんと色々な話をしました。kuniさんのお話によれば、束草の街には中国との商売を行っている人が結構いるようです。束草からロシアのザルビノ港まで定期航路があり、商売を行う人はその船に大きな荷物を積み、ロシアから琿春という中国の町に抜け、更に延吉などという朝鮮系の人が多い町などまで行って、そこで持ってきた荷物を売りさばくようなのです。そういえば金剛山のバス運転手さんたちの出身地は延吉あたりらしいです。本当に韓国や北朝鮮や中国やロシアは、分断されているようでどこか繋がっているようです。
「のりまきさんも、今度は白頭山に行くために束草からザルビノ行きの船に乗りに来ませんか?中国国内は、私の知り合いによれば安く泊れるみたいですし……」と、kuniさんは話します。韓国の人たちと一緒に、束草からロシアのザルビノへ行って、それから中国の朝鮮族が多く住む(つまり北朝鮮との国境地帯)に行くということは、たしかにとっても興味深い話です!いつかやってみたいなあ〜〜と思います。
さて、おなかもいっぱいになって皆で車に乗り、アパートまで戻ります。食事代は全部部屋貸しのご主人持ち……太っ腹であります!感謝!!部屋貸しのご家族は、今晩は私たちに部屋を貸して親戚の人のところに行くそうです。私たちは部屋貸しのご家族、kuniさんとも別れてから、まだまだ賑やかな夜の束草の海水浴場に行ってみました。海水浴場はとにかく人が多く、屋台も色々出ていました。テキ屋みたいな屋台もあって、野球の球を投げるタイプやバスケットボールを使うものなど、なかなかユニークなものもあって、面白かったです。浜辺に出てみても多くの人がくつろいでいました。

束草海水浴場の夜店です。

海水浴場の散歩が終わり、部屋に戻ってお風呂に入って寝ることにしたのですが、この夜はなぜか蚊がいっぱいいて、のりまき・ふとまきともふとんに入るやいなや、蚊の大量襲撃に見舞われることになりました。金剛山帰りで疲れていたのりまき・ふとまき……すぐに眠れるかと思いきや、絶え間なく耳元に鳴り響く『ぷぅ〜ん』という羽音に眠るどころではありません。部屋を借りているとはいえ人の家……ものを探すのも気が引けましたが、あまりのかゆさに困り果て、蚊取り線香を探しましたらありました!とっても目立つ場所に!!蚊取り線香をつけてしばらく経つと、蚊はどこかへ逃げて、なんとか眠りにつくことが出来ました。ちなみに翌朝、トイレで血を吸いすぎてよたよた飛んでいた蚊を3匹つぶしました……
あと、この夜は海水浴場周辺で騒ぐ若者が多く、朝までにぎやかでありました。朝の5時頃に『ハッピバスデトゥーユー!!』と大声でわめいていた若者もいましたが、あれはいったい何だったのでしょうか?
朝になりました……日本帰国の飛行機は夕方の出発ですが、日曜なので半島の反対側の仁川国際空港までの道が混むので、朝のうちに束草を出発です。のりまき・ふとまきは、朝、海水浴場を散歩の後、朝食をとります。朝はあまり多くのお店は開いていませんでしたが、開いているお店で一番美味しそうな店で朝食です。のりまき・ふとまきともスンドゥプ(おぼろ豆腐)をいただきます。なかなかのお味でしたが、つけあわせのさつまあげのようなものの甘辛煮が絶品でした(^o^)。ところでこのお店では、朝の7時台にもかかわらず、2組のカップルが焼肉をがつがつ食っていました……朝の7時から焼肉ですか……半ばあきれながら眺めている私たちの目の前で、肉の山がどんどん減っていきます。
アパートに戻る前に、高速バスの切符を購入しました。今度はソウルではなく仁川行きの切符を買って、仁川まで行ってみることにしました。切符を買った後、アパートまで戻り荷造りです。4泊5日という短い旅行でしたが、今回も結構色々なことがありました……
8時過ぎ、kuniさんが迎えにきました。kuniさんの車で束草の高速バスターミナルまで、私たちと重い荷物を乗せていってもらいました。そして高速バスターミナルでお世話になったkuniさんとお別れです。どうもありがとうございました!!
束草を朝の8時半発のバスでしたから、日曜とはいえまだ渋滞もなく仁川まで順調に進みます。仁川のバスターミナルは大都市の郊外にありがちな、新興住宅街の大型ショッピングモールそばにありました。ショッピングモールで昼食を食べ、すこしモール内を見てまわった後、仁川国際空港に向かいました。
夕刻、私たちは仁川国際空港から飛行機に乗って日本に向かい、夜の9時過ぎに成田に戻ってきました。自宅には夜の12時ごろ到着です。お疲れでしたが今回も充実の旅でありました(^o^)。



嵐の萬物相(9)へ戻る

嵐の萬物相・序章に戻る

蓬莱の巻へ戻る

金剛一万二千峰へ戻る

のりまき・ふとまきホームへ戻る