嵐の萬物相
(1)

金剛山出発前、束草《ソクチョ》港フェリーターミナル到着までのお話〜


束草の電話ボックスとのりまき。兵隊さんが多いですね〜〜


今回の金剛山旅行は、成田空港朝9時半というかなり早い飛行機だったので、自宅は朝の4時半すぎに出発しました。金剛山での飴屋の金さんとの再会を期待し、更にはインターネットで知り合った束草《ソクチョ》在住の日本人、kuniさんへのお土産などもリュックに詰めこみ、張り切って出発しました(^o^)。最寄駅で5時前に始発電車に乗り、横浜まで向かいます。のりまき・ふとまきが電車に乗り込んでみると、始発とはいえ結構込んでいました。
横浜には5時20分過ぎに到着、さっそくリムジンバスの乗り場に急ぎます。5時半出発のリムジンバスに滑り込みセーフ。早朝ということもあり、バスは快適に進みます。7時ごろには成田空港に到着、朝の早い時間ということもあって空港はあまり人がいません。のりまき・ふとまきはすぐに大韓航空のチェックインカウンターに向かいます。
大韓航空のチェックインカウンター前には結構人が集まりだしていました。先頭には中年の男性と女性が立っていました。先頭の男性は映画監督の大林宣彦氏にそっくりでした。ひょっとしたらご本人だったのかもしれません。
さて、大韓航空はなかなかチェックインを始めようとしません。そんな中、のりまき・ふとまきの後に一人の白人男性がチェックイン開始を待ち、列に並びました。その白人男性はなまりの感じられないわかりやすい英語で私たちに話し掛けてきました。男性の話によれば、ここ2週間ほど日本に滞在し、韓国に向かうとのことでした。日本では京都・名古屋・東京を廻り、京都では金閣寺、清水寺、そして大枚はたいて祇園でゲイシャ遊び(^○^)。東京では明治神宮などを廻ったそうです。またこの男性が、のりまき・ふとまきのいでたちを見て「韓国に行ったら雪岳山《ソラクサン》にでも行くのか??」と聞いて来たのには少々びっくりしました。雪岳山は束草にある韓国有数の名山で、金剛山の近くにある山なのです。少々考えましたが、一応「雪岳山には行かないけれども、その近くの山には行きます」。と答えておきました(笑)。
7時半前には航空券の発券が開始されました。大林宣彦氏とおぼしき中年カップルは、しっかりファーストクラスにチェックインです(^o^)。少々大きな本なので迷いましたが、飛行機出発前に成田空港内の本屋さんで、韓国についてのマンガを購入しました。それから飛行機は大体予定通りに出発。ソウルまでの旅は特に何の変哲もない海外旅行であります。韓国の仁川国際空港到着後もスムーズに前回旅行と同じくソウル江南の高速バスターミナルにたどり着きました。高速バスチケット売り場で束草行きのバスチケットを購入。3分後出発のチケットを渡された前回とは違い、今回は20分後出発のチケットです。余裕でトイレに行き、それから高速バスに乗り込みました。ソウル出発は午後の1時半でした。
バスは渋滞に会うこともなく順調に進んでいきます。3時近くになってソサという名前のサービスエリアで休憩。サービスエリアは前回旅行と同じでした。のりまきはクンマンドゥ(餃子のような食べ物)、ふとまきはハンバーガーを購入。さっそくぱくつきます。
休憩後もバス旅は順調で、午後の5時半頃には束草に到着しました。しかし、ソウル近郊では晴れたり曇ったりであった天気が、東海(日本海)側に出ると雨が降り出してしまいました。7月の韓国東部は天候が不順なことが多いと聞いていましたので、金剛山観光を前に不安がよぎります。
束草に到着してみると、前回の冬とは違い随分とにぎやかであります。結構多くの人が高速バスターミナル周辺を歩いています。そして到着するやいなや、今回もやはり民泊のおばさんが声をかけてきます(^o^)。到着後事前の約束通り、kuniさんのところへ電話をかけようと思ったのですが、電話ボックスがいっぱいです。特に迷彩服着た兵隊さんたちが長電話して、なかなか電話が空きません。さだめし彼女にでも電話していたのでしょう(^○^)。
数分後、ようやく電話ボックスが空きました。まだ若い兵隊さんは電話を待っていたのりまきの姿を見て少々恐縮していたようです。電話をkuniさんのところにかけると、「すぐに高速バスターミナルまで来る」。とのこと……待つこと約5分、kuniさんが姿を見せました。kuniさんはアグネス・ラムを思い出させるキュートな感じの女性でした。
kuniさんは、大荷物抱えた私たちの姿を見ると、さっそく荷物を置くために、kuniさんの住む同じアパートの知人宅へと案内してくれることになりました。今回の旅行では事前の連絡でkuniさんに色々骨を折っていただき、束草ではのりまき・ふとまきは、kuniさんの住む同じアパート内の、kuniさんの知人のところに泊る約束をしていたのでした。kuniさんは私たちを車に案内します。車は私たちが乗り込むと、束草海水浴場の方へ進んでいきます。冬の時とは違い、海水浴場への道は、人も車も多く、なにやら楽しげな屋台など並び活気があります。
kuniさんたちが住むアパートは、高速バスターミナルからも束草の海水浴場からも程近い場所にありました。そして今晩泊ることになるというアパートの部屋に案内されてびっくりしました。あらかじめ知っていたこととはいえ、本当に人が住んでいるアパートをそのまま、宿として使うのです!束草は夏場、観光客が大勢訪れるので、多くの家でこのような“民泊”を行うのだといいます。そして観光客を泊めている間、その家の人は近くの親戚の家に泊ったりするのだというのです。
kuniさんは、私たちが荷物を置くとさっそく夕ご飯に案内します。kuniさん運転の車に乗ることやはり約5分、幹線道路から外れた、静かな場所に車は止まります。kuniさんは「ここはマッククス(韓国風蕎麦)と、スユク(茹で豚)の美味しいお店です」。と説明します。料理が出てくる前に、まずはどんぐりで作ったどぶろくで乾杯です。口当たりも後味も良好な、飲みやすいお酒です(^o^)。
まずはスユクが出てきました。皮付きの豚肉を茹でた、一見単純料理のスユクなのですが、歯ごたえ良し、肉の旨味も充実の逸品であります(^o^)。
続いてマッククスです。細麺タイプの冷たい汁かけ蕎麦韓国風味といった感じで、これもまたなかなか美味であります(^o^)。マッククスの盛りは大層なもので、食べ終わるとおなかがパンパンであります。
kuniさんによると、このお店はもともと束草の北、高城(注)にあったお店だそうです。kuniさんのだんなさんはもともと高城の生まれなので、高城にあった時からこのお店のことをよく知っていたとのことです。高城は本当にもう北朝鮮が目と鼻の先にある町で、kuniさんの知人の兄が、海に漁へ出たところ北朝鮮側につかまって、北に行ってしまった話などもあるそうです。
夕食の後、kuniさんは私たちを束草近郊のドライブに連れて行ってくれました。まずは雪岳山です。霧と雨の中でしたので、雪岳山はほとんど姿を見せませんでしたが、観光地らしくおみやげ物屋さんが並び、のりまきはユーモラスな仮面を購入しました(^o^)。
雪岳山の後は、束草の裏手の方に廻ります。途中束草の夜景がきれいな場所を横目に見て、更には放し飼いのにわとりを料理して食べさせてくれるお店が並ぶエリアを通りました。
雪岳山から車で15〜20分くらい走ったでしょうか。kuniさん運転の車は、幹線道路脇の細い路地に入っていきます。まもなく私たちの目の前に変わったオブジェ林立の不思議空間が現れました。相当雰囲気が怪しい場所で、どちらかというと“ザ!主張!!”向きのエリアであります(^○^)。kuniさんによれば、ここは食堂兼喫茶店で、経営者のひとりがkuniさんの知り合いということなのです。またこのお店、怪しげな雰囲気の店なのに、韓国のドラマのロケ地にもなったとかで、それなりに有名な場所であるようでした。

ま、こんな感じです(笑)

私たちはここでお茶を飲みました。のりまき・ふとまきは韓国風の美味しいお茶を堪能いたしました。お茶の後、束草市街にあるスーパーマーケットに寄りました。ここで束草の中では美味しいとの評判のパンを翌日の朝食用に購入。さらには水やヨーグルトも朝食用に買い入れました。
夜の9時過ぎに、kuniさんの自宅と私たちの今晩の宿があるアパートに戻りました。アパートの玄関先にはkuniさんのお子さんがお母さんの帰りを待っていました(^o^)。私たちは部屋に戻ると、さっそくシャワーを浴び、ふとんを敷いてお休みであります。気持ちよく安眠いたしました。

翌朝は朝の7時過ぎに起きました。起きてみるとやはり天気は良くありませんが、とりあえず雨は降っていませんでした。さっそく海水浴場の方へと朝の散歩です。kuniさんによれば北朝鮮からのスパイ進入を恐れ、海水浴場は夜の12時から朝の6時までは立ち入り禁止なのだそうです。海水浴場の入り口にはしっかりゲートがあります。ゲートをくぐり、朝の海水浴場に着いてみると、さすがにあまり人は多くありません。空気も美味しく、砂も水もきれいな良い海水浴場です。ただし水は冷たそうですが……

北からのスパイ進入防止のため、海水浴場入り口にあるゲート

海水浴場の外れの方に突堤があって、そこには活魚料理屋さんが軒を連ねていました。店によっては松葉蟹がたらいの中に泳いでいたりもしましたが、朝早いこともあってかどこも開いていません。しばらく周囲をぶらぶらしてから、もういちど海水浴場に戻ると、束草市の観光案内所が設置されていることに気づきました。観光案内所は朝早いのにもう開いています。中には束草の観光地図やら特産品の展示がありました。そしてインターネットも出来るようになっていました。さっそく『のりまき・ふとまきのホームページ』を探し出し、掲示板にローマ字でカキコです(^o^)。
部屋に戻って朝食であります。kuniさんが『束草で美味しいと評判』というだけあって、昨晩買ったパンは美味であります(^o^)。朝食後、のりまき・ふとまきとも金剛山出発に備え荷物整理をしていますと、玄関をノックする音がします。『kuniさんが迎えにきてくれたかな?』と思って玄関を開けてみると、見知らぬお父さんお母さんに男の子が現れました。マンションのこの部屋の持ち主さんご家族でした。
お母さんが私たちに話しかけてきました、「こんにちは、下の駐車場で見ていたら、干していたタオルを取り込んでいたのが見えたので、『もう来てもいいかな』。と思いました」。あれあれ……とっても上手な日本語……「こんにちは……はい、もうすぐ出発します」。私たちがお母さんにそんな話をしている最中、kuniさんが現れました。ちなみにこの家の奥さんは、日本生まれの在日韓国人だった方なのだそうです。道理で日本語上手なわけだ……
kuniさんと私たちが泊った家の奥さんに、金剛山観光帰りまで荷物の一部を置いておいてもらえるようにお願いして、いくぶん軽くなった荷物を背負って出発です。とってもありがたいことに、束草港まではkuniさんが送ってくれます。束草港に到着すると、既に結構多くの人が集まってきています。前回旅行時は本格的山登りの支度をしていた人が多かったでしたが、今回は子ども連れの家族の姿が目立ちます。やっぱり夏休みだからでしょうか?それとも子どもの金剛山観光料金の多くを韓国政府が補助するようになったからでしょうか?また、束草港は金剛山行きの雪峰号のターミナル隣に、白頭山行きツアーの船が出航するターミナルがあるのですが、そのターミナルがリニューアルされたみたいで、大きな白頭山ツアーの宣伝看板を立ててあったりします。

白頭山観光の看板

kuniさんと束草港で記念撮影をした後、しばしのお別れです。私たちは金剛山行きの手続きをするために、受付カウンターに向かいました。


注……高城とは、金剛山(外金剛・海金剛)や花津浦一帯の郡であった。現在の韓国ー北朝鮮双方にまたがっているため、南北ともに“高城郡”が存在する。元来、高城郡の郡庁所在地は三日浦や海金剛の近くに(つまり北側)にあったのだが、韓国側は杆城(カンソン)という場所に高城郡の郡庁を置き、北朝鮮側も軍事境界線に近いもともとの郡庁所在地ではなく、金剛山の観光船が停泊する長箭(チャンジョン)に郡庁が置かれるようになった。
そのため、韓国側は高城と杆城、北朝鮮側は高城と長箭という地名が、ともに同じ場所なのにごちゃごちゃに使われるようになってしまい。時々混乱をしてしまう場合がある。



嵐の萬物相・序章に戻る

蓬莱の巻に戻る

金剛一万二千峰へ戻る

のりまき・ふとまきホームへ戻る


嵐の萬物相・2へ進む