巻9 
−海老名の性格、そのカルマー 
「海老名、大学3年 そのD」


Y大学教育学学士(心理学)
今 柊ニ
黒崎 犀彦
共著(原本執筆は、今 柊ニ)1994.4.10


しかし、一体何なのだろう?この発刊のペースの速さは。お陰で、記述者の私はもうボロボロだ。大体、この本は夜中にファミレスで鉛筆で下書きをして、私が通勤の東○線の中でペン入れしているのだ。周囲の人の視線も気になるが、やっぱり面白いからつづけているのだろうな〜。なお、K駅〜M駅は電車がゆれるのでペン入れには向かない事が判明しました。
……どうでもいいよな。電車の中でペン入れしているのはどうせ俺くらいなんだから。
今 柊ニ




1章 はじめに
今:黒崎学士どこかに行ってたんですか?
黒:転勤の都合であれこれと……少し疲れています(注1)。
今:そうですか。ボクは元気もりもりですよ。
黒:良かったですね。脱線しないうちに始めましょう。

2章 海老名食べかす事件(ファミリーレストラン食べかす事件)
(有頭海老ドリア事件)
今:前回は箱根合宿まで話しましたが、この事件もやはり3年の後半に起きた事件です。たしか、雨の土曜日でした。夜、皆でご飯を食べに行こうということになり、黒崎学士、私、海老名、Kそしてトロの5人でファミリーレストランへ向かう事となったのです。
黒:たんなる食事の為の集まりだったのですが、一回の外食があれほどのさまざまな事件を引き起こしてしまうとは……。
今:まず、行き先のファミレは私の強引な説得により、港南区のビッグボーイに行こうということになりました。なぜなら、このファミレはスープ、サラダともに食べ放題でもとがとれるからです。
黒:今学士らしい発想ですね。
今:はい。私はファミレの『安い冷凍食品に「少しのはっぱ」と「さとう水」をつけて、値段を吊り上げる』の法則が気に入りませんでしたからね。あっ、また話がそれている。で、港南区のレストランに向かうにはKくんの車に乗るしかないので、我々は彼のス○ーレットに乗って出かけました。が、ここで目立ちがりやのトロが「バイクで俺は行く」と主張したのです。

黒:まったくひねくれた奴です。
今:案の定トロはどしゃ降りの雨の中、一人でバイクを走らせ、あの草津合宿の合宿のように迷子になって遅れるわ、途中で別のバイクに乗ってる女に話し掛けられるわで、いろんな目にあったみたいですが……あ、これも海老名には関係ないな〜。
黒:その話は詳しくは別紙(注2)で記すことにしましょう。ともかく、我々は港南台の「ビッグボーイ」を目指したのです。案の定、トロが遅れて我々が先についてトロの悪口を言っていたところ、トロが息せききって入ってきて「ナンパされていた。」と告白したのです。あっ、この話はしないのでしたね(笑)。
今:すっかりトロの話に逸れてしまいましたが、ともかく我々は注文をすることにしました。前述したように、このビッグボーイでは、サラダとスープの食べ放題がついているステーキ、ハンバーグをチョイスするのがベターなのですが、小僧(海老名のこと)は なんだかわからないけど「有頭エビドリア」という意味不明なものをオーダーしたのです。
黒:今から考えると例によって胃腸の調子が悪かったのではないかとも考えられます(注3)が、本人はビッグボーイのメリットのなんたるかを全く意識してなかったのでしょう。


今:当然、我々はハンバーグやステーキを注文し、馬のようにサラダやスープを食しました。そうすると、オレンジの皮やトマトのへた、パイナップルの皮やドレッシングの残り液などのゴミが出ますわなァ。
黒:いちはやく、有頭エビドリアを食べ終っていたエビなの皿がゴミ捨て場のターゲットとなるのは仕方がないと思うのですが、やはりみな同じことを考えたらしく、食べかすを海老名の更にポイポイ捨て始めたのです。そのときの海老名の様子を実は観察していたのですが、みるみるうちに目がきつねのようにつりあがってきたのを覚えています。
今:そして爆発したのです。海老名は3年のこの時期になると少しは社会性も出てきていたのですが、やはり『自分の領域をおかされる』ことには敏感で過剰な自己防衛反応が生じるのです。だからこそ、みんな面白がっていじめるのですが、彼はまだその事実に気がついていませんでした。
黒:そして海老名の防衛反応が限界を超えた時ついに彼は
「何も俺の皿に捨てる事はないだろう!!」

とどなったのでした。
今:一瞬にしてみんな静まりかえりました。
黒:台風一過とでも言うべきでしょうかね。
今:いや「さわらぬ海老名にたたりなし」でしょう。まあ、くわしくは巻末のマンガを参照して下さい。
黒:何しろ当時の海老名は短気でした。車のことといい、食べ物のことといい。
今:ただ、前述したように、この短気もすでに臨界点を越えていて、徐々にはですが『社会化』に向かう時期に突入していたのです。しかし、大学前半のつけは大きく、3年末にそのつけの精算とでも言える事件が起きたのです。……
黒:今学士の言う通り、この頃になると、海老名にも多少の自我の変化が見られてきたのですが、何しろあなた、超自我や自己というものがそんなに簡単に変わらないという事が、後述する事件であきらかになったのです。つまり、周囲の人が見る海老名は以前とあまり変わっていなかったのです。
今:大学3年後半の時期にその海老名の変化に気がついていたのは黒崎学士ただ一人でした。当時は私も『海老名は相変わらずだ』と思っていましたから。
黒:えらいんですね、私も。
今:そりゃ、あなた、あなたは世界最高の海老名家ですから(エビナニスト)。

3章 F教官、海老名単位「ない」事件
今:さて、そうこうしているうちに1988年も終り、昭和天皇もおかくれになり、平成というマヌケな元号の時代がやって来ました。この1989年の初頭に海老名・トロの2大巨頭の最初の研究の集大成とも言える「NORI AND TORO」が発行され、一躍世界の注目を浴びましたが(注4)、「社会化」へひそかに向かう海老名はイヤーな顔をし、トロは無視していましたが、内心イカリくるっていたようです。

黒:第3者の私に言わせれば今学士のマンガ大成であり、一大傑作と言えましょう。
今:ハハハハ。まあ、それはともかくとして、89年になるともう3年も学年末となりました。ここで、海老名は前述してきたように大学前半の精算と言える象徴的な事件が起きました。そして、この事件の背後にはあの海老名の宿敵のF教官がいたのです。
黒:いわゆる「生理心理学」の事件ですね。
今:そうです。で、この事件の内容に立ち入る前に心理科の学年別の授業構成について多少お話しましょう。1学年次は一般教養と心理学の基礎勉強、2学年では教職を取る人は各教科の単位と、心理学の基礎実験、心理学の実験、検査を中心とした演習、そして3年次では各ゼミにわかれて、それぞれのゼミのテーマ研究を行ないつつ、同時に心理科の専門講座がありました。F教官の『生理心理学』はこの専門講座の一つでした。
黒:内容としては、生理心理学に関する外国の研究論文を和訳するという海老名にとってはゴルゴダの丘にのぼるような試練だったわけですね。
今:しかし、英訳が弱い海老名がなぜ、それも敵のF教官の『生理心理学』を受講したのでしょうか?
なぜなら、この講義、和訳でも行ないましたが、その英論文の内容が「ネズミに一定の刺激を与えて、そのネズミの脳を取り出し、遠心分離機にかけて成分を研究する」とか「ネコの頭にソケットをつけて大脳各部位の実験を行なう」とか「人間の脳内物質に迫る」とか、地球における一つの研究テーマとかなりリンクしていたため、海老名の母星から「単位を取得するように」との指令がきていたからにほかありません。

黒:地底人からも指令が来ていたのではありませんか?
今:また地底人ですか?でも主たる要請は母星のシリウスから来ていたに違いありません。しかし、英語に対して劣等な能力しかない海老名は(しかし、宇宙人なのに、なぜ英語が苦手なのか?(注5))英単語を一語一語も和訳するたびに、まさにゴルゴダの丘の上で足と手に打たれるような心境だったに違いありません。
黒:つけくわえて表現するなら、クラスメート及びF教官がパリサイト人サドカイ人に見えたに違いありません。
今:で、苦しみの授業はようやく2月に終りました。普通の講義なら試験があるのですが、海老名以外には仏のように優しいF先生は『試験はなしだから』とのたまわったのです。
黒:たとえが続きますが、それはあたかも海を真二つにして人々をわたらせたモーゼのようだったと言えます。しかし、そのモーゼも海老名だけは……。


今:この講義を受けていた我々は「テストがないのだから皆に単位をくれるのだ」と思っていました。で、そのまま2月が終り、心理科恒例の「卒業生追い出しコンパ」が3月の初めにもよおされたのです。で、宴もたけなわになったころ、酒で真っ赤になったF教官がスックと立ち上がりマイクをつかみました。そして「今から大事なことを言います。」とのたまれました。それまで、騒いでいた学生諸君は静まりかえりましたが、海老名はその時異様に元気で下級生にからんでいたため

とまず、F教官は牽制球を投げました。だまる海老名。そして一瞬の沈黙の後、

黒:やらないじゃなくてないってところが良かったですね。
今:次の瞬間、我々が爆笑したのはいうまでもありません。海老名はまさしくギャフンとしていました。なお後日談ですが、生理心理学を受けていた生徒は海老名を除いて全員単位がとれていたばかりか、みんなAでした。一回しか授業に来なかった人も、レポートを忘れていた人もAでした。でも、レポートも出して、授業もマメに出ていた
海老名はダメでした。
黒:いかにF教官が海老名を憎んでいたかがわかります。
今:はい。このようにして3年が終り、いよいよ最終学年の4年がやってくるわけですが、F教官の攻めにもめげず、海老名の快進撃は続くのでした。
黒:4年次ももりだくさんですよ。


【注解】

(注1)……津○○の山奥からYに4月から転勤となった黒崎学士。ねっぱり女との決別はすませ、新天地で新たな一章を記すのか?

(注2)……次期研究課題はトロで、その研究書である「トロ対策とその実践」も早く刊行が待たれるところだ。

(注3)……「胃腸の調子が悪い」にしては、ドリアなんか消化の悪いものを食べたら、一層悪くなる気がするなぁ。

(注4)……どこの世界で注目を浴びたのか?

(注5)……もし宇宙人だとすれば、なぜ彼が日本語しかしゃべれないのか?「海老名型宇宙人」の大脳構造については諸説があるが「言語領域のキャパシティ」が一言語単位しかないからであろう。であるから、日本に送られてきた「海老名宇宙人」は日本語しかしゃべれないのは当然だ。なお、ひょっとするとあまりかしこくないのか?
ともかく、別の国に送られた「海老名宇宙人」はその国の言語を以下のようにしゃべる。






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