巻8
 −海老名の性格、その正体ー
 「海老名、大学3年 そのC」


Y大学教育学学士(心理学)
今 柊ニ
黒崎 犀彦
共著(原本執筆は、今 柊ニ)1994.3.22


ゆれる学説……海老名の正体について
今号においては、主に箱根合宿についての報告が掲載されているのだが、その中では、海老名の正体を解明する手がかりとなる事件が記録されている。この事件をもとしにて、今学士は海老名の正体を解明したとの所信を表明し、それに対し黒崎学士が異論をとなえている。
 どちらの説が正しいかは現時点では判断が難しいが、今後の動向に注目していきたい。
とりあえずは本書を読んでみてね。



1章 はじめに
今:どうでもいいですが、また雨ですね。
黒:やってはいけないことをやっているからでしょうか?
今:いや、私の内なる心が『やれ』と言っていますよ。
黒:そうですか。では仕方ありません。やりましょう。

2章 箱根合宿@……蕎麦屋編
今:前回はカーライフだけで1冊使ってしまい少し反省しました。今回はなるべく1つの出来事をポイントをついて、簡潔にまとめていきたいと思います。
黒:そんなこと言って、もう3行使っていますよ。
今:ああ!!わかりました。はじめましょう、で、海老名の免許と前後してだったと思いますが、3年の秋、確か11月くらいだったと思いますが、黒崎学士、海老名の属するNゼミと私の所属するFゼミが共同して箱根へ合宿に行きましたね。
黒:そうでしたね。海老名のはしゃぎようと言ったらあなた……。
今:しかし、なんで海老名は外出をずるとああはしゃぐのでしょう?
黒:サルと同じなんじゃないですか…そんなことはどうでもいいから話をすすめましょう!!
今:はいはい。で、まずどうしてNゼミとFゼミが一緒に箱根に行こうということになったんでしたっけ?
黒:Fゼミの合宿とほぼ同じ頃、我々Nゼミでも合宿へ行きたいなぁという話が出ていたのです。しかし、そのメンバーゆえに実現はされなかったのです。そんな折に偉大なF先生より「一緒に行かないか」というお声がかかったのです。
今:「そのメンバーゆえに」というのは、つまり海老名がいるからということですか。
黒:両方です。

今:つまり、合併症ですね。で、とにもかくにもこの箱根合宿に出発したのですが、たしか行く時はみんなで箱根登山鉄道と小田急を乗り継いでいきましたねぇ。
黒:そういえば、箱根についてからみんなで蕎麦屋に行きました。
今:そうです。そうなんです。なんでも有名な蕎麦屋でした。中国からの留学生のPさんも(注1)日本ではじめて食べる蕎麦ということで、彼が期待していたのを覚えていますよ。
黒:その蕎麦屋に入り、蕎麦を食べ始めるにあたってF先生様が「正しい箸の使い方」についての講義を始めたのです。そしてまさに期は熟したといわんばかりの発言が出たのです。


今:ここにも海老名VS F教官、または光の神(アフラマズタ)VSやみの神(アーリマン)の戦いがうかがえますね。
黒:F先生のその指摘に対し、例によって海老名が大声をはりあげ、にわかに私が不快になったのを覚えています。
今:海老名の大声は怪鳥モアのようですからね。箸の使い方はもちろん、食べ方も相変わらず汚かった。蕎麦に初挑戦だったPさんの方がよほど上手く食べていましたよ。
黒:私など、海老なの食べ方を見ると、いつもお子様ランチを食べて口の周りや洋服を汚しまくっているガキを思い出したものです。
今:なおかつ、この店の蕎麦は有名店にありがちな量の少なさだったのですが、その量の少なさにもかかわらず、あっちこっちに蕎麦切れを飛ばしつつ食べていたものだからあなた、蕎麦屋を出た後、海老名はさすがに満足できなかったのか、「あたしは腹が減った」と周囲の事も構わずドナっていたのを覚えています。
黒:ほんとうかなぁ(笑)。
今:多分本当です(注2)。その真意はともかくとして、一連の海老名の行動に対してF先生は黙っていたものの、内面では氷のような殺意を覚えていたに違いありません。

3章 箱根合宿A……宴会編
今:で、途中箱根彫刻の森美術館を鑑賞した後、宿泊先のセミナーハウスに到着し、夜の宴会となったのですが、この宴会はFゼミ、Nゼミの3年生はもちろんのこと、4年、5年、6年と、「大学は一体何年生だったのか?」と疑問を感じるほど長くいる人や、正体不明の聴講生(注3)、さらに院、教官が入り乱れてアバレまくる恐ろしい宴会となりました。
黒:被害者も出ましたよ。
今:そうです。当時Fゼミにヒゲという院生がいて彼がNゼミの4年生をさんざんに飲ませて急性アルコール中毒にさせてしまったのです。


黒:オケを抱いて布団で寝ていたその人をとても哀れに思ったものです。しかし、現在となっては、そんな悪事のばちがあたったか、世にも奇妙な女を娶ったヒゲこそ、究極の哀れと言えましょう。(注4)
今:しかし、そのオケを抱いていた人も、別の奇妙な女を娶ってしまいましたよ。ということはやはりヒゲがまだましでしょう。(注5)
黒:そうでしたね。……そんなことはどうでもいいんです!!
今:あっ、また逸れてしまった!!とりあえずみんなアバレるほど泥酔した宴会でしたが、不思議なことに海老名はこの時は吐きませんでした。吐かないということはエネルギーが残っているということです。そのため、彼はこの宴会の直後活躍し、非常に重要な発言をしたのです。

4章 箱根合宿B……星事件
今:はい、次にうつります。この事件はとても重要です。なぜかというと、海老名の出生に関係しているからです。事件事態は単純ですので、簡単に話しましょう。宴会の後、私は買ったばかりのビデオムービーで星を撮ろうとカメラを上に向け、ひときわきらりと輝く星を見て、「あれがシリウスか!!」と言ったのです。その時いつの間にか背後にいた海老名が(これもこわいなぁ)


とのたまわったのです。海老名はその後も「シリウスはあれで、木星はあれだ」と、やたら星の説明を始めましたが、私はこの時、それまで感じていた海老名の正体についての仮定をより一層強く確信しました。
黒:それはなんですか?
今:
海老名が宇宙人だということです
海老名はシリウス人なのです。だから、星にも詳しく、異星人のようにキカイ(奇怪)な行動もするのです。また、地球の生態についても研究をしているので、奇妙な読書ばかりするのです。
黒:ということは、宇宙空間において移動を繰り返した海老名は、アインシュタインの理論によると実は既に数百歳になっていることがわかりますね。
今:いわずもがなです。しかし、彼の長い人生の中で、地球での日々はまだ短く、地球での生活になじんでいるとは思えません。そのため、地球の食べ物を食べ、すぐ下痢をするのです。
黒:……しかし、私は海老名の家を見て、あれは地底人にちがいないと思っていたのですが。
今:実は地底人とも交流があるようなのです……。
黒:(アキレて)この話はこの辺りでとりあえず止めましょう。

5章 箱根合宿C……ベロベロバー事件
今:海老名の正体がわかった恐怖の夜が明け、朝が来ました。で、我々は箱根観光をしようということになり、大桶谷や芦ノ湖に行きましたねぇ。
黒:ええ、良く覚えていますよ。とりわけ記憶に残るのは私があまりに寒かったものだから、海老名のジャンパーを取り上げて寒さをしのいだことです(注7)。


今:前述しましたが、私はこの時期、ビデオムービーを買い、いろんな所を撮影していて、この箱根にも持ってきていました。そして「海老名のジャンバーを取り上げる黒崎学士」や前述した星事件など、くまなく映像に残しています。その映像を見るにつけても、やはり最もインパクトが強いのは……。
黒:ベロベロバーです。
今:芦ノ湖でビデオを使い、記念撮影をしたのですが、海老名の脳が一体どのような働きをしているのかはわかりませんが、この男は執拗にカメラに向かってベロベロバー…。あれは一体何の意図があったのでしょう。
黒:良くわかりませんが、目をむいて下を出している海老名はこわかったです。
今:海老名のベロベロバーについてはいずれ、しっかり論及したいと思います(注8)。



6章 Pさんの3段論法
今:中国からの留学生Pさんの引き起こしたちょいと、イカす話ですね。
黒:箱根合宿の前後だったと思いますが、偶然NゼミにPさん、私、K、海老名がいて、フリートークに花が咲いていた時のことです。Pさんが何を思ったのか
「Kサン、イイ。ヤサシイ。女の子ニモテルネ」と言いました。突然の発言でしたが、私はPさんの人間観察能力に感心したのです。すかさず、「オレはどうですか」と聞いたら「クロサキサン、チョットダメネ」と言ったので、皆大笑いしましたが、そこでよせばいいのに海老名が「あたしはどうですか?」と問うたところ、「ああ?海老名さん、モットダメネ」と言ったのです。
今:という、とても洞察力に富んだPさんの話でした。(しかし、今回も全然進みませんでしたね……。)



【注解】

(注1)……Pさん。上海師範大学の助手の人で、すでに30を超えていて向こうには奥さんもいたらしい。大陸的な豪快かつ素朴な性格で、Nゼミに色取りをそえていた。

(注2)……今学士が「多分」というときはあまりあてにならない。

(注3)……通称オバQ。Fゼミの聴講生で、学生、院生よりも長い時間Fゼミに居座っていた。彼、家庭裁判所の調査官となったが、私が3年になった当時はこの人の正体がわからず苦労した。後になって思うと、大学で本当に勉強だけをしたいなら、試験の何もないこの聴講生が一番だと気がついた。うまくやったなオバQ!!

(注4)……ヒゲは我々と同期の某女子と結婚した。エキセントリックな性格で、一時期黒崎学士の「周辺」をうろついていたため、黒崎学士のこのような表現になったのだろう。

(注5)……「オケを抱いていた4年」も、同期(我々と)の女の子と結婚した。この人もエキセントリックな人で、「エバ」と呼ばれていた。挙句の果てにこの2人は別れてしまうのだが、私はそれを例えて「エバ・エンディング・ストーリー」と言って、世間の顰蹙をかった。
しかし、女の子たちをエキセントリックだというと、女の子は「男子の方がエキセントリック」と叫ぶだろうが、男女ともエキセントリックなのだから仕方がない。

(注6)……この時期、バイトで経済力がついてきた私は高級電気商品を買い漁っていた。このビデオカメラもたしか9万円ぐらいした。今じゃもう買えねえなぁ。

(注7)……相変わらず、海老名のジャンバーはイトーヨーカ堂か忠実屋の意味不明なブランドだった。

(注8)……海老名のベロベロバーは「地球人に対する有効の挨拶」との見解が現在有力となっている。(94年3月現在)





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