巻5 
−海老名の性格・行動様式・人生航路ー
「海老名、大学3年 その@」


Y大学教育学学士(心理学)
今 柊ニ
黒崎 犀彦
共著(原本執筆は、今 柊ニ)
1994.1.30


読者からの反響
「あいかわらずねぇ。」……T女史(旧心理科副会長)
けっこうなものを頂きまして……」…Nウィルソン(旧心理科の女学生、現K在住)



1章 はじめに
今:こんにちわ。駄目になった今です。(注1)
黒:何かあったんですか?
今:……いいえ、別に。(突如大声を出して)僕は大丈夫だ!!さあ、今回もスカッと行きましょう!!
黒:なんだかこわいなぁ。

2章 いよいよ大学3年へ!!
今:さて、とうとう5巻目にしてようやく大学3年に突入することになりましたね。
黒:この3年から海老名の活動も本格的になってきたのです。
今:研究者である我々の筆にも力が入るというものですね。では、黒崎学士何から行きましょうか?
黒:3年時のスタートはやはり新歓コンパでしょう。プシケ刊行により海老名の名前は一躍新入生に拡がったのです。
今:そう言えば、あのプシケは後に海老名の個人攻撃が激しすぎると本人からの報告がありましたが、それは仕方がありません。だって海老名なんですから。(注2)
黒:それはさておき、なまじ海老名のキャラクターが先行したために新歓コンパでは爆笑ネタが誕生したと言えましょう。
今:ところでその新歓コンパはどこで開かれたのでしたっけ?
黒:確かあれは桜木町の“K”です。今やMM21地区に押されて、廃ビル同然になったPシティの8階にありましたが、あまりにもY大心理科の我々があばれたのでつぶれてしまいました。
今:で、新たに心理科全体を引っ張って行く役目となった我々3年が運営し、黒崎会長が仕切ったのでしたね。
黒:私は何もしてません。
今:あっ、そうだ。あんたは象徴天皇または傀儡会長と言われて、実権はT女史(注3)が握っていたのでした。
黒:話がそれましたが、で新歓コンパは、心理科全学年をと言っても100数人程度ですけど、一同に集めて4月某日に開かれました。
今:そこで、海老名の登場です。
黒:海老名の評判はですね、新入生の間でもすでにかなり広がっていたようで、あちこちで海老名の話がされていました。このコンパの時もある一人の新入生(女)がもう一人の女の子に大声で「○○ちゃん、のりりん(海老名のこと)としゃべったんだって?」と発言したのです。ところがどっこい、その“○○ちゃん”が喋った相手は海老名ではなく別の人物だったらしいのです。(トロの可能性大)それで、またそんな時に限って海老名はその女の子たちの真後ろにいるのです!!

そして海老名は一言

と言ったのです。
今:女の子たちのあっけにとられた様子が目に浮かびますなあ。
黒:何でもその女の子は『えーっ!!』と絶句したらしいです。
今:まさしく怪談のようですな。のっぺらぼうに驚かされた男が逃げてきて、道端の人に「のっぺらぼうを見た。」と言ったところ、その道端の人が「こんな顔だったかい。」と言って振り向いた所、その道端の人ものっぱらぼうだった話を思い出します。
黒:うん、小泉八雲の世界ですね。まあ、海老名も魑魅魍魎(ちみもうりょう)の一種ですからねぇ。

3章 虎の威をかる狸と猫…新入生にいばるトロとのり
今:で、このように新入生に対してインパクトを与えたのりですが、ここそとばかりに新入生に対して攻勢に出ました。つまり、同級生から与えられてるインフェリアコンプレックスの補完的作用として下級生への力動形成がなされたのです。
黒:何を言っているのかわかりません。
今:つまり、我々に威張れないから、下に威張るということです。のりだけでなく、トロもそうでした。(注4)さて、トロはともかく、ここでは海老名が下級生に威張る一コマを黒崎学士説明して下さい。

黒:私が良く目撃したのは、エレベーターの向かいにありロビーで1年生を集めて、ボデーランゲージをまじえて“能書き”をタレる海老名の姿でした。
今:どんな“能書き”でしたか?
黒:それがひどいのです。私がその“能書き”の場所に顔を出すと、新入生は私に対して「会長さん、そんなに一杯女に振られているのですか?」とか「黒崎さんて大めしぐらいで寝てばかりいるのですか?」とかとんでもないことばかり聞いてくるのです。その脇で笑っている海老名の顔の憎たらしい事と言ったらあなた、表現のしようがありません。どうも……海老名は自分の噂をでっち上げだと言ってそれを正当化し、かわりに私を変人扱いするようなことをフイゴのように吹きまくっていたのです。だから、新入生にはむしろ私は海老名以下と思われていたかもしれません。
今:ナチスのゲッペルスばりの宣伝ぶりですなあ。デマゴークとでも言いましょうか、ただまあ、威張って自分の虚像を作ろうとした海老名でしたが、そうは問屋がおろしません。海老名の話を3回でも聞けば、彼のつじつまの合わないことや本人の奇矯ぶりが常人ならわかるのです。
黒:分裂気質ですからねぇ。
今:そうです。そして海老名の強化政策はそのロビーで展開されたのですが、日に日に一人ずつ減り、最後には暇をもてあました1年がただ座っているだけという状況となりました。つまり近所のヨタをとばす中風じじいのようなものだったのです。
黒:今学士は“荒野の説教師”とも表現しましたね。
今:トロも全く同じ表現があてはまります。

4章 ユガんだ個室……Nゼミの授業風景(ハブ事件)
今:さて、下級生への強化政策もどうやら失敗が明確になりはじめたころ(ただし、本人はずっと失敗とは思ってはいなかった)海老名と黒崎学士が所属するNゼミでは、ゼミ授業が開始されましたね。
黒:Nゼミにはこの時期、研究生として長野の女子大からMさんというシスターが来ていましたので、ゼミは私、海老名、そのシスターとN先生の4人で行なわれました。見るからに奇人である海老名とシスターの格好でニコニコと笑っているMさん、そして私、他のゼミとは一線を画した風景でした。


今:異種格闘試合みたいですね。で、海老名の様子を説明して下さい。
黒:本題に来ましたね。ゼミで我々に与えたテーマは外国文献の和訳というものでした。与えられた時、“これはヤバイ”とピンと来ました。
今:それはどういう意味ですか。
黒:私が不得意という事ではありません。もちろん、前述した海老名のゼロに等しい語学力のことです。そし彼はやはりやってくれました。
今:もう予想がつきました。
黒:彼の和訳はちんぷんかんぷんで、全く坊さんの読経と同じです。言っていることがさっぱりわかりません。
今:分裂病の患者は“言葉のサラダ”というぐらい、単語を文脈としてつなぐとこが出来ないのです。海老名も分裂気質でしたから、当然意味の通った文章なんざつくれるわけはありませんね。
黒:忘れもしないのが、ある長文を和訳していた時のことです。相変わらず彼はお経を読んでいまして、そのと「……で……な……をもつ」と言ったのです。私ははっと思い、英文を見ましたが、もつなどと訳せる単語はないのです。ところが一つだけ「have」という単語があり、その次にはなんと過去分詞があったのです。

:have+過去分詞と言えば現在完了形で、中学生でも知っていますよ。
黒:その時の風景がまたすさまじいものでした。うつむいて目を吊り上げN先生の審判を待つ海老名、にこにこ笑っているシスター、石になっている私、悩むN先生…。
今:すばらしいコントラストを描いた人間模様ですね。
黒:その時の海老名の表情は恐かったですよ。あしゃらのような顔でした。N先生も恐かったらしく、教授にあるまじき間違った審判(ジャッジメント)をしてしまったのです。
今:それは何ですか?


今:うーむ、N先生の苦悩ぶりが良くわかる一言ですね。そう言えば、苦悩したのは実はN先生ばかりではありませんでした。私のゼミの教授のF先生との戦いも始まっていたのです。

5章 海老名 VS F教官……ゾロアスター教のたたかい
黒:なんでゾロアスター教なんですか?
今:これはですな、ゾロアスター教(拝火教)ではアフラマズタという光の神とアーリマンという暗黒の神が未来永却たたかい続けるというところからきているのです。海老名とF教官のたたかいに私はゾロアスター教の教えを垣間見てしまったのです。海老名がアーリマンであることは言うまでもありません。具体的な争いについては、海老名はF教官の講義をいくつか受講していたのですが、その中でやはり英文和訳が必要となるものがあったのです。授業中の様子については、全くNゼミで展開された状況と同じでしたが、N君と違いF教官はにこやかな表情の下にも“キライなものはキライ”というはっきりとした人でした。ましてやアーリマンは嫌いです。さて、このアフラマズタVSアーリマンの戦いの結果についてはいずれ述べることになるでしょう。
黒:決着というか、戦いの結果がわかるのはいつぐらいのことですか?
今:3年の学年末のおいだしコンパですよ。思い出しましたか?
黒:はい、わかりました。あの名言ですね。それはあとにまわしましょう。

6章 なみだの横浜スタジアム事件
黒:これは笑えるけど海老名の悲しい事件です。
今:これは知らないなぁ。
黒:春先のことなんですけど、海老名が突然「おまえ、野球を観に行かないか?」と言ってきたのです。私は「何だそりゃ?」と聞きましたが、「いや〜、“大洋×巨人”の券を2枚持っているんだけど、良かったらもらってくれ」と言うのです。私は「お前、誰かを誘って行けばいいじゃないか?」と言うと「いやぁ……さんを誘ったんだけど用事があるらしいんだよな。」と疑いのない目で言うのです。それではと、私はチケットをもらいました。その後私はある女の子を誘って野球を観に行きました。翌日、海老名に「ありがとう、楽しかったよ」とお礼を言いました。そこで、「ところでおまえ、昨日何をしていたんだ?」と聞きました。彼は「家庭教師のアルバイトをしていただけだ」と答え、あとは何も言いませんでした。
今:うーむ、これはいわゆる海老名研究における異性問題ですね。3年になっても妄想は続いていたのですか。
黒:そうです。しかし、妄想の相手が変わりました。そしてさらにひどくなりました。このころから彼は“かんちがい大将”と呼ばれるようになりました。
今:では次回は、そのかんちがいぶりから考察、研究、分析を加えることとしましょう。
黒:悲しい話が多いですよ。(♪禁じられた遊びのテーマで♪)
つづく


【注解】

(注1)……前号の黒崎氏の“だまっとき”発言と同様のニュアンスが含められたメタファー(隠喩)と思われるが、詳細は不明。しかし、本人が元気なところを見ると大したことはなかったらしい。

(注2)……絵にも記した通り、本人から又苦情が出てしまった。が、仕方がない。私と黒崎学士は観察を続けねばならない。なぜなら、そこに海老名がいるからである。

(注3)……心理科の副会長だった。現在はK社のバリバリエディター(編集者)として活躍中。彼女の感想は裏表紙(ふとまき注:読者からの反響)に記した通り。

(注4)……海老名とは違い、トロのいばりかたは、派手ではなかったものの、もっと屈折して間接的なものであった。つまり、ボディーブローのように後からきいてくるのでタチが悪かった。詳しくは、次期研究予定の『トロ対策とその実践』をまて!!

(注5)……心理科は人文棟という5階建の校舎の4階にあり、エレベーターをおりた所に机と椅子がおかれ、そこがサロンとなっていく、ゼミ室を持たない、大学1,2年生のたまり場となっていた。


特別付録!!(PSYCHEに登場した海老名の肖像!!)

4巻でも説明したが、PSYCHEとは、心理科で年一回発行していた雑誌である。この中でも海老名は様々な形で登場しているのだが、その中で最も秀逸とされているのがこの図。『イラスト版・フロイト』の挿し絵から採用し、フクダシを消して、今が独自コメントを書いて周囲の拍手を得たのだ!!



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