のりまき観察日記内金剛編(2004年6月19日〜23日)
6、さあ!念願の内金剛だ!そのに


内金剛:木が倒れ、道がわからなくなっている


6月21日(月)
お寺を後にするといよいよお弁当の時間である。寺の近くの川の大きな石の上でランチタイムが始まった。ガイドさんがビールも用意してくれ、ふとまきは当然ビールを頂く。何日かの旅行でお酒は苦手とわかったL課長とのりまきにはジュースも用意されている。用意周到である。しかし、カップを忘れたと持参の水のペットボトルを半分に切って(ライターで燃やしたり)ビール用のカップにしようとするが、なかなかうまく行かずにピョンヤン瓶ビールは瓶のままラッパのみをした。栓抜きもなかったが、運転手さんがビールとビールとで掛け合わせあっという間に栓を抜く。箸も1セット足りなかったが、運転手さんはその辺に落ちていた細い枝を箸にして食べていた。なんとかなるものである。外で食べるお弁当はとても美味しかった。

さて、ここでのりまきは妙吉祥に行きたい旨をL課長に言いたいのだという。
「せっかくここまで来たんですから。でも行けるかな〜。この先どこまで行くんだろう」などとぶつぶつ言い出す。
「じゃあお手製のパンフレットをL課長にお見せしてここまで行きたいと言ったら?」
と促す。
「そうだね」
と自分で作った家にある絵葉書や地図などのコピーと韓国のHPのコピーとで作った内金剛のパンフレットをL課長に見せ
「あのう〜。これ、僕が作ったんですけど、良かったら差し上げます。で、ですね〜。今日はここまで行きたいのですが、行けますか?」と妙吉祥を指す。
「ここに行きたいんですか?多分いけると思いますよ。みなさんも行きたいですか?」
とL課長は他の人にも聞いてみる。他の人は
「せっかくここまで来たんだし行けるところには行っておきたい。」
というような感じで了解される。そうは言ってもその場所がわかっているのはL課長と、地図上でのりまきが知っていただけで他のひとはこの先どんな風に何があるのかなどは知るはずもない。のりまきはかなりの距離があると言うが「九竜の滝のハイキングで最後の急な階段がない程度と思う」と言う。それならまあ、大丈夫そうだ。そして、同行のL課長の格好は、と言うと革靴をはいていたので、それで行けそうなところならまあ大丈夫だろうと思う。

お弁当も食べビールでほろ酔いの一行は妙吉祥目指し歩き出した。雨はまだぽつり、ぽつりとしていたが、徐々に弱まっていた。

金剛門をくぐる。
「ほら。金剛門ですよ。」と興奮するのりまき。
「本にも書いてあるの?」
と聞くと
「はい。内金剛の入り口です」
まあ、なにせふとまきはビールを飲んでしまったので歩くのがつらい。よたよたと進んでいく
歩きながらも
「あ!国花だ。きれいだな〜」と足を止めたりする。
その「あ!」という声が大きいので先に行くSさんもついつい何だろうと思うようである。
「え?国歌?」とSさん。こんなところで歌など流れていないのに・・・。という反応で、国歌はコッカでも
国花違いだった。
「国歌と言っても国に歌ではなく花の方の国花です」とふとまきが言うと思わずSさんが笑って
「のりまきさん、花にも詳しいの〜」と笑いながら言う。のりまき、嬉しいのか
「韓国の国花は むくげ だけどぼくは北朝鮮の国花の おおやまれんげ 方が好きだな〜。匂いもいいしね。その点から言えば金日成の方がセンスいいよね。韓国に文句いうわけじゃあないけど むくげ じゃあね〜。」
などと聞いてもいないのに国花の話をする。また始まったかぁ〜、と思うふとまきと感心???するSさん。

のりまきは「日程から考えて表訓寺で帰るか、行けてもこの先の普徳庵までかと思ってました。だってホテルからここまで来るだけで一体何時間かかってんのよ。もう昼もとっくに過ぎたのよ。これでまたあの道を帰るんでしょ?こりゃあすげ〜よ。ったく。だから、本当のこと言って妙吉祥まで行けるなんてうそみたい・・・。まさかL課長にここまでしてもらえるとは思いませんでした。本当、疑っていたこともあったこと、謝りますよ。」となどと言っている。さて、このあたりで里の方から着いて来た少年が登場する。私達がバスでここまで来たが少年たちは走ったり歩いたりして来たのである。かなりの距離であり、高低差もあるので来るというだけでもすごいが、こようと思うというのもすごいと思う。のりまきはその少年たちのことを
「いや〜、まだ着いてきますよ。すごいな〜。僕だったら日本の中長距離の選手にスカウトしますよ。」と興奮気味に何度も何度も言っているのである。Hさんは、
「こっちの方ではこのくらい走ったりするのはあたりまえですけどね」とぼっそり言っている。車がめずらしく、自転車すらあまり台数は見なかった。どこに行くにも歩きか走り。足腰が丈夫であたりまえ、というところなのだろう。
結局その少年二人は普徳庵まで来て、ふとまきもお菓子でも持っていればあげられたのに、その時持っていなかったので何もあげられずに帰っていった。

のりまきは相変わらず写真を撮りながら進むので、またまた私達が遅くなってしまった。本で景色も熟読しているので
「わ〜、これが噂の万瀑洞かぁ〜。きれいだな〜」
と言ったり。噂って誰のうわさよ〜?古本の中での噂なのである。
途中、普徳庵の見えるところで写真を撮っているとどかんと大きな音がした。写真撮影ばかり気にしていたのりまきがすべって転んだ様子。普段なら大騒ぎをするのにその時はすぐに立ち上がり
「大丈夫?」と声をかけるふとまきに
「大丈夫ですよ。」と平然と答えるのりまき。その後も写真を撮っている。後になって転んだ直後の写真の手ブレがひどかったことがわかるが、それは
「あの時転んで肩と腕をぶつけたから写真の調子が悪いんですね」と言うのであるが。
そうこうする間にL課長とETさんはどんどん先に進んでいく。Hさんは適度に皆の行動範囲内でついてきてくれる。先ほどの少年たちのコメントをしただけあって、フットワークも軽やかだった。順番は忘れたが、私たちは結局その軽やかなHさん以外全員転倒した。もちろん帰り道最後に油断をしたふとまきも転倒。
話は戻り。


普徳庵に先に到着するETさんとL課長。私達が下のつり橋を渡っているくらいで普徳庵の中からこちらに向かい手をふっている。

高所恐怖症ののりまき。つかまらないと渡れない。前方はわざと揺らすHさん

のりまきは何枚も写真を写す。感激、である。
「わ〜、普徳庵には本当に入れるんだ〜」
こっちとあっち、お互いに
「おぉ〜い」と手を振っている。
遅れて私たちも到着する。本で何度も見せられた1本柱で崖に立てられている寺である。本には大人二人までしか入れないと書いてあったらしい。順番に中に入る。Hさんが
「奥さんは重たいですから、1人で入ってくださいね」と冗談を言う。しかし、特に冗談とも受け取らず、
「はい。」
と言ったものだから大慌てで「冗談ですよ。」と自分でフォローするHさん。


普徳庵の中

結局写真を撮りながら登ったのりふとがやはり最後で、普徳庵から私達が出ると他の人は休憩をしていた。
ひとしきり、ここまでの長い道のりの話をしたあと「妙吉祥へはあと少しです。行きますよね」とL課長。
「はい。もちろん」とのりまき。
ふとまきが「頂上なんかは遠いんですか?」と聞く。
「頂上はまだまだ時間がかかります。元山から日帰りは無理です。頂上まで行くならこの辺りに泊まって頂上を目指さないとなりません。内金剛の観光をしていくにはこの辺に(普徳庵からちょっと下の方を指して)山小屋を建てようかという話もあります。しかし、人もない、お金もない。そして建てても旅行者が少ないのではね・・・。」とL課長。そこですかさず
「じゃあ、ここに山小屋でも建てたら?のりまきさん。のりまき山荘とか言う名前にしてもらってさ〜」とふとまきが言う。するとHさんが
「奥さん?です?よね〜、そんなこと言うのは」と信じられないといったような感じで笑っている。どうせやるなら小屋でも建てればよろしい。『のりまき山荘』・・・?
しかし、その辺に山小屋を建てると言っても電気もない、建ててもそれに見合った観光客が来なければ建てる意味もない。のりまき山荘を建てても泊まるのがのりまきだけじゃあね〜。
上にも書いたが例の少年たちもここで引き揚げ、いよいよ妙吉祥に向かい始める。

しばらくは道が続きここまでと同様にL課長どんどん先を歩く。どんどん行くが、L課長の認識では本当にすぐに到着すると思っていたようだった。しかし、歩けどもそれらしき物が現れない。挙句に大木が倒れていて道も塞がれている。不安そうになるL課長。するとのりまき作成のパンフレットを見出す課長。それを見ても尚、一本道を違えたかもしれないなどと言うではないか。しかし、のりまきは頭にすっかり入った地図で
「道は間違いない。他に行く道なんてなかった」
と断言し、地図を見入るL課長を抜かして先に行く。すると、大木で倒れていただけで先には道が復活していた。

「こっっち〜。道ありますぅ〜。」
と叫ぶとL課長もついてくる。道が復活するとまたL課長は足早に先にぐんぐんと歩いて行った。
え〜?まだ〜?すぐって言ったじゃん。っというムードが高まった頃L課長が見覚えのある景色に気がつく。

やった〜。到着!!!

念願の妙吉祥に無事に到着した。一同感激である。
ETさんともSさんともついに来ました!というような感じで盛り上がる。L課長は内金剛の誘致をしている人なので来たことがあったが、課長以外に、朝鮮旅行者のガイドさんは誰も来たことがないらしくHさんも感動している。いつもはこちらからお願いしないと記念写真の撮影に応じてくれないHさんだが、このときは自分からポラロイドカメラを持っていたSさんに
「フィルムありますか?撮ってもらえませんか?」
と言っていた。記念になるのだろう。
「今回、私もL課長に選んで頂けたのでここまで来ることが出来たんです。他、会社でも来たことがある人はいません。」と嬉しそう。ま、課長は課長でHさんが頑張っているから・・・。というような事を言われていた。しかし、後から冷静に考えるとそれだけ来るのが大変なところということのようだ。そんなみんなで感激していると
「俺たちもさ〜、特に俺なんか、なんかあんまりわからないままついてきて、何時間もバスにのってで、こんな風に転んだりしてまでも歩いて来て・・・。最後この大きな仏像の前に来て、結構感動しているけどさぁ〜、でもここまでこんなに時間をかけてきて最後これを見て、『で、何?』って言われちゃうって可能性もあるよね〜」とごもっともな事を言う。

おそらくここまで執着して、こんなに喜ぶ旅行者はのりふとくらいなものだろう。ETさんとSさんに感謝である。
この喜びを他の人に味わってもらいたいからとか、こんなに喜んでくれるんだからツアーを増やそうなどと思ったら大間違いである。

何でもL課長は内金剛観光誘致のため、頂上まで行かれたようだが、前回の視察の時も普徳庵までだったようで、ここまで来たのは戦後旅行者としては初めてではないかということだった。

記念撮影もし、時間もないからと帰り始める。

帰りはもう感激しながらののりまき。ご機嫌である。
「いや〜、陸路観光では日本人第一号を目指していましたが、結局だめで、でもこうして内金剛は戦後旅行者として初めてだなんて。あ〜、ほんと、来て良かったな〜。ほんと、嬉しいです」
そんな風に気分は最高。足取りはもちろん軽い。
「しかし、途中、木が倒れていたりして道も無かったけど、まさか僕が作ったパンフレットがあんな形で利用されるとは思わなかったよな〜。だって課長、一生懸命見てたよね〜。僕は道は間違っていないと思ってたんだ。だって地図上では他の道、なんてなかったもの。」
はいはい。という感じになってくる。

一行、も足取り軽く歩いていると何やら大きな木が聳え立っていた。
「わ〜。デカイ木」
誰かが言ったのであろう。すると
「モミの木ですね。これは。」
すかさず口を入れるのりまき
するともう笑いをこらえながらHさんが
「のりまきさん、木にも詳しいんですね。金剛山だけじゃなく、カエルにも木にも」
と肩で笑う。
にやにやよろこぶのりまき。

細い橋を渡ったりしながら、随分と下る。それでも結局遅くなるのりふとを皆が休憩(一服)しながら座って待っていてくれた。そんな時に、今まで皆が転んでも転ばなかった〜。と気がゆるんだふとまきがすって〜んと尻餅をついた。
「これで転ばなかったのはHさんだけですね」
と嬉しそうに言うのりまきを睨んでやった。(笑)

その後、道のない方に行き始めるのりまき
「この先に有名な書道家が書いたという石に刻んだ文字があります。あと碁盤も。それらを写真におさめますので、僕はこっちから行きます」
と一人行き始める。他の人が心配したので
「なんでも、有名な人が書いた文字があるようなんです」
とふとまきが言うと
「のりまきさんは字にも詳しいんですね」
とHさんが言う。大笑いである。
結局他は誰もついていかなかったからか、合流した時には
「やはり、ちゃんとありました。本に書いてあったとおりでした。写真も撮れたし、もう言うことはありません。ふとまきも見ればよかったのに・・・。」
と、とてもいいものを見ないで損しましたね、とでも言いたげに言っている。

そんな風に、わいわいしながら寺まで戻る。帰りは早く感じた。

のりまきは課長に勧められるまま川で足を洗い、感激感激、である。
帰りには寺で働いているという女の人を二人乗せた。乗せる代わりに歌を唄ってくれるので乗せていいか?というようなことを聞かれ、
「ま、断わる理由もないからね〜」
とのりまき、テンションハイである。
しかし、一緒に仕事を終えた男の人は歩いて帰るのであるから不公平なように思うのはふとまきだけだろうか。行きに怪我をした人を乗せずに帰りに歌を歌うお姉さんが乗るというのはなんとも不思議な気分だった。

気分は不思議だったが、唄はびっくりするほど上手かった。
唄を聞きながらのどやかな風景を眺め、適度な運動をした私たちは帰りは寝てしまう時間が多かった。

さすがののりまきも無事に内金剛行きが達成され、興奮もそうは続かず、結構良く眠っていた。

そのために韓国の新品ヒョンデのトラック3台?とすれ違った時、え?珍しいんじゃないのかな〜?と思って周囲を見渡したが、みんなグーグー寝ていた。

休憩である。
なんだかふとまきは知らなかったのだが、拉致被害者の日本人が溺れたとかなんとかという噂の海岸で休憩を撮る。



そこにはマルチーズがいた。
「あら、かわいい。マルチーズですね。おい、おまえ、かわいいけど食われるなよ。」
とのりまき。
「マルチーズは食べないよね〜。」
といったような話になり、北朝鮮にマルチーズがいるなんて・・・。などという話となる。誰かが
「マルチーズって原産はどこだっけ?」
と今目の前になぜ、マルチーズがいるのかと不思議になりそんな話となると
「あのね〜、マルチーズはマルタ島が原産です。」
とあたりまえのように答えるのりまき。もう誰も驚かない。ただ、呆れるのみである。
そしてHさんに
「のりまきさんは犬にも詳しいんですね」
と笑われている。

休憩の場所の近くは湖もあり、また泥パックの有名な場所らしく、宿泊も出来るとか。そんなことものりまきは事前調査で知っていたようで、そんな話がガイドさんからでると
「そうよ。昔の本にも書いてありましたから。」
などと言うのであった。

休憩も終え、元山に向かいバスが進む。

元山のホテルに着いた時には20時をまわっていた。半日を越えた内金剛の旅が無事に終了である。

フロントでお湯を出す時間は何時がいいかと聞かれ、その時間前に3人は解散して、シャワーを浴びた。さすがののりまきも気を利かせ、湯の出ない時間から身体を洗い、早めにバトンタッチ。お陰でふとまきもお湯を使うことが出来た。(2004.8.27記)


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